9. 生殖・発生・発達に対する2GHz帯電磁波ばく露の修飾作用
目的:電磁波の生体への影響については、最近は子どもへの影響の可能性や不眠・頭痛といった不定愁訴や過敏症の問題が重要視されるようになってきている。
この問題に対しては携帯電話端末及び基地局からの電磁界ばく露の両方について検討が必要とされている。
最近、WHOでは子どもへの影響を対象とした優先的研究課題を発表し、高周波での動物実験研究として、標準的な毒性試験、中枢神経系の発達への影響、BBB形成への影響等について高い必要性を挙げているが、これらについての報告は極めて少ない。
とくに胎児に対する影響に関する研究成果の報告はない。
そこで、携帯電話を使用した妊婦における胎児の発達への影響および基地局からの電磁界ばく露の妊婦および幼児への影響を評価するため、以下の実験を行う。
1. 妊娠ラットの頭部に2GHz帯高周波電磁波を照射し、妊娠ラットの生殖機能および胚・胎児発生に対する影響を検討する。
さらに、本試験の予備検討として、妊娠ラットを保定器で拘束することによる胎児の発生への影響について検討する。
2. 妊娠・授乳期に2GHz帯電磁波に全身ばく露されることによる児動物の行動・学習など中枢神経系の機能を含む発達への影響を検討する。
試験結果概要:
1. 妊娠ラットを保定器で拘束することによる胎児の発生への影響
携帯電話等で用いられる電磁波(2GHz帯高周波電磁波)の妊婦へのばく露による胎児の発生への影響を検討する試験の予備検討として、妊娠ラットを保定器で拘束することによる胎児の発生への影響について検討した。
妊娠ラット4匹を器官形成期である妊娠7日から17日まで保定器に入れ、電磁波ばく露箱内(暗条件下)に1日1.5時間拘束した。対照群として、拘束しない群(4匹)を設けた。
母動物については妊娠期間中(妊娠7~20日)の体重を測定し、妊娠20日にエーテル麻酔下にて帝王切開を行った。
帝王切開時に妊娠黄体数、着床痕数、生存胎児数および胚・胎児死亡数を調べた。生存胎児は性別判定、重量測定および外表観察を実施した。
保定期間中、母動物の一般状態には拘束の影響は観察されなかった。
体重では、保定群は対照群と比較して保定期間中約10g程度の低値を認め、拘束による影響と判断されたが、保定期間終了2日後には対照群と同程度に回復した。
母動物の肉眼的病理学検査においては異常を認めなかった。
帝王切開時の検査において、子宮内の状態を調べた結果、妊娠黄体数および着床痕数ともに拘束による低値を認めなかった。
さらに、生存胎児数についても拘束による低値を認めず、生存胎児性比、生存胎児体重および胎盤重量にも拘束による影響を認めなかった。
また、生存胎児外表観察においても異常を認めなかった。
胚・胎児死亡数については、自然発生性と考えられる早期吸収胚を対照群および保定群の母動物各1例に認めたが、後期吸収胚および死亡胎児についてはいずれの群においても認めなかった。
以上の結果より、母動物の体重増加は拘束により軽度抑制されたものの、胎児の発生には影響しないことが示された。
詳細については、「9.1 電磁波照射実験予備検討(妊娠動物の保定器によるストレスの影響)」を参照。