Ⅴ 考察
今年度の480人のパイロットスタディとしてのアンケート調査で、いわゆる感受性かもしれない方が2人いた。
この事実は重要で、我々の目的とする実験で20人の感受性症状を呈する方を集めるためには、約5000人のアンケート調査から被験者をリクルートする必要があると判明した。
また、今回のアンケート調査の教訓として、以下の項目をアンケート用紙に追加する必要があると考えている。
1 被験者自身が現在の症状が電磁波により生じていると考えているか。
2 アレルギーの既往に関する質問を行なう。
3 アンケート調査の場合、質問に対する答えの傾向が個人個人で違いがあるため、この点を結果の評価で考慮すべきである。
4 女性を対象に気分に関する評価を行なうため、月経周期と実験日の関係を把握しておく必要がある。
これらの教訓をふまえ、更に改善した質問用紙により、今後大規模なアンケート調査を施行する必要があると判断している。
これだけの規模の電磁過敏症に関するアンケート調査は、世界的にもほとんど例はなく、アンケート調査の結果だけでも、充分重要な情報をもたらすと考えている。
実際の実験に関しては、3人の被験者の実験の行程が無事行える事が確認出来たことは、本年度の何よりの成果である。
まだ、key open していないため、電磁波の影響に関する結論を出すことは出来ないが、これらのデータを蓄積する事により、電磁過敏症と言われる方々が電磁波のみに過敏なのかどうかに関する結論が出るであろう。
Ⅵ 結論
平成17年度においては、実験室のさらなる整備を進めると共に、被験者を集めるための方法について検討を行い、詳細な研究計画を作成した。
その研究計画に基づき、第三者による研究倫理審査を受け、研究計画に対する承認を受けた。
研究計画に基づき、被験者を集めるための調査票調査を実施した。
本研究については全くの新しい試みであり、調査票を配布した人数のうちどの程度の人数が実験に参加することを承諾してもらえるか不明であったため、本年度はパイロット調査として480人規模で調査を行なった。
その結果、次のことが明らかとなった。
① 有効回答数213名のうち、いわゆる感受性かもしれない方が2人いた。
② 説明会に参加して研究に参加しても良いという方が、10名確保できた。
③ 上記の10名のうち3名について実験をし、問題を発生することなくデータを取得した。さらに、2、3名について、実験する目処がついた。
①の事実は重要で、我々の目的とする実験で20人の感受性症状を呈する被験者を集めるためには、約5000人のアンケート調査が必要であることが判明した。
従って、今後5000人規模のアンケート調査を行なう事を計画し、多くの被験者の実験を行ない、本研究課題を総括する必要がある。
これらの研究により、電磁過敏症とされる病態の解明に少なからず役立つと思われる。