4.1 2.45GHz帯開放系マイクロ波照射装置
2.45GHzマイクロ波照射装置の構成を図3に示す。開放型高電力ばく露装置である。
導波管内等ではなく開放型とした理由は、より実条件に近いマイクロ波照射を実現するため、また被照射試料設置に要する時間が短くでき、設置試料の寸法自由度が高いためさらに後述する温度制御機構等、追加装置の組み込みが容易なためである。
測定試料にマイクロ波を照射する場合、局所的に高いエネルギー密度の部分が生じるような照射は測定の不安定要素を増加させるため望ましくない。そこで、測定試料全体に均一なばく露を実現するため、ホーンアンテナおよび誘電体レンズにより平面波を励振する構成とした。
今回用いたマイクロ波発振器の諸元は表1に示す通りである。
試料に対するマイクロ波出力はマグネトロンの出力を調整することにより任意に設定可能である。
また、誘電体レンズを用いることにより、測定試料を設置する領域に均一なばく露面が構築可能である。マイクロ波の不要な反射および散乱を防止するため、 試料後方に高出力に対応した電波吸収体を設置している。
表1 発振器の諸元
さらに、パルス変調したマイクロ波照射を実現するため、マグネトロンの発振制御部を改造し、パルス発生器と接続して装置を構成することにより、Duty比10%程度のパルス照射を実現した。図4に、パルス照射系を示す。
外部の信号源により、出力振幅・パルス幅をコントロールし所望のDuty比に設定することができる。
また、実験においては、被照射細胞温度をモニターおよびコントロールしつつ、高出力なマイクロ波照射を行うため、図5に示すような恒温漕を用いた温度制御装置を用いた。設
置においては、ペトリディッシュの上部位置に固定し、被照射細胞に直接
的な影響を与えないことを確認している。また、石英円筒管底面からの反射による照射強度上昇影響については、電磁界解析により検討を行っている。
4.2 900MHz帯導波管型マイクロ波照射装置
900MHz帯導波管型マイクロ波照射装置を図6、7に示す。
信号発生器、パワーアンプ(100W)、整合調整スタブ、導波管および終端器から構成されている。
試料に対して高密度な照射を実現するため、導波管内部にテーパー部を設けたテーパーリッジド導波管に、高出力対応型のスタブチューナーを接続することによって、高密度かつ一定な条件のマイクロ波照射が可能である。
900MHz、100W出力で長時間運転が可能であり、リッジドウエ-ブガイドを含む全体での定在波比VSWR=1.6程度を確認している。また、スタブチュ-ナ-は14Ωから170Ωの範囲でインピ-ダンス補正が可能である。
図7に、周波数900MHzにおいてFDTD解析を行った照射装置の電界強度分布特性を示す。試料設置位置における電界強度は、導波管内でリッジにより約1.5倍の強度となる。
また、照射マイクロ波は、信号発振器により、連続波、GSM、PDC(Full、 Half)、cdma2000およびパルス変調を設定可能である。
図6 900MHz帯導波管型マイクロ波照射装置