28:電波ばく露による生物学的影響に関する評価試験及び調査 | 化学物質過敏症 runのブログ

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6.2 ドシメトリに基づく物理的影響メカニズムの検索

1.序論
1.1 研究目的
本研究は、高周波ばく露が生体に及ぼす細胞生物学的な影響について、物理的な立場から機構解析を行うことを目的としている。

本研究と並行して、「6.1細胞影響評価と機構解析(以下「6.1項の研究」という。)」では生物学的な立場から研究が行われている。
2つの研究プロジェクトでは、生物学的な検索の指標に共通点はあるが、6.1項の研究が細胞の種類や生化学的な検出系を考慮した生物学的側面に着目しているのに対し、本研究では高周波電磁界の制御やそれに伴う熱的環境の変化などに着目した物理的な側面を重点的に検討の対象としている。

これらの研究が互いに補完しあうことで、高周波電磁界の生体影響に対する理解が深まることが期待される。この点が6.1項の研究と本研究の特色であり、この特色を活かした成果を得ることが本研究の目的である。
本研究の検討対象には、ばく露によって生じる物理環境の変化によるアーチファクトを明らかにすることも含まれる。

すなわち、細胞試料を高周波電磁界にばく露すると、細胞位置における物理環境の変化は避けられず、その結果として細胞機能に影響する可能性がある。その変化はばく露によって生じる点では高周波電磁界による作用には違いないが、電磁界固有の作用であるとは限らない。

例えば、高周波ばく露が温度上昇をもたらすことは周知であるが、これは熱作用として扱われ高周波電磁界にのみに限られた作用ではない。

したがって温度上昇による影響と、高周波電磁界そのものによる影響は区別されなければならない。

ばく露による影響が、高周波電磁界による熱的な作用であるのか、非熱的な影響であるのかを明らかにすることも重要な課題である。
今年度は前年度の研究をふまえ、物理環境の変化をより深く検討し細胞実験を実施する。

より詳細な熱解析手法により、作用が細胞位置の温度場だけに依存するかどうかを明らかにする。

また熱的な作用と非熱的な作用を識別することを目的として、円形導波管ばく露装置に高精度の温度制御機構を付加し、詳細な実験と解析を実施する。

1.2 本年度の成果概要と報告書の構成
これまで細胞用のばく露装置として、我々の研究室では円形導波管のTE01モードを利用したばく露装置[1]、方形スリット導波管を用いたばく露装置[2,3]を開発し、6.1項の研究の実験に使用されてきた。

また、昨年度は、円形導波管のTM01モードを用いた新たなばく露装置(図2.2)[4]を用いた細胞ばく露実験を行い、平均電力が同じであれば熱ショックたんぱくの発現はピーク電力に依存しないことがわかった[5]。

本年度は、このばく露装置を用いて、さらに詳細な熱解析にもとづいた細胞ばく露実験を報告する。
またばく露装置に高精度の温度制御機構を付加し、その性能評価を報告する。
第2項では、前年度の成果をふまえ、不均一温度場における電磁界ばく露による細胞影響を詳細に検討した結果を報告する。

前年度では、平均電力が同一条件で実験を行い、熱ショックたんぱくの発現はピーク電力に依存しないことがわかったが、さらに多角的な面から検討を重ねるために、温度場を詳細に検討し、発現量を比較した結果を述べる。
第3項では、第2項に述べた結果をふまえ、温度測定の重要性について再検討する。

細胞実験に使用されるインキュベータは、庫内の温度分布が一様でないことはあまり認知されていない。

また実験に使用する温度計の誤差を含めた検討が重要であることをこの項で検討する。
第4項では、昨年度まで用いてきた円形導波管型ばく露装置に改良を重ね、ペルチェ素子とサーミスタ温度計によるPID制御を用いた高精度の温度制御機構について述べる。

この制御機構により、いままでは温度上昇が著しく細胞実験が不可能であった高電力のばく露についても可能になった。

最後に、第5項で得られた結論をまとめ、本年度の成果を総括するとともに、今後の課題について述べる。