・http://www.sankei.com/life/news/151124/lif1511240008-n1.html
2015.11.24 08:06更新
小児慢性疲労症候群 「脳の働きすぎ」画像診断で判明
慢性的な疲れや倦怠(けんたい)感が続き、早寝早起きができなくなるなど日常生活にも大きな影響を及ぼす「小児慢性疲労症候群」。
その患者の脳を調べたところ、複雑な課題を処理する際に過剰に神経が働き、疲労を増していることが、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター(神戸市)の研究で明らかになった。
小児慢性疲労症候群は不登校との関連が指摘されており、脳の過活動を抑えるなど脳科学の視点からの新たな治療法の開発が期待される。
(坂口至徳)
複数課題で活性化
国際慢性疲労症候群学会の診断基準によると、小児慢性疲労症候群は、慢性の疲労や倦怠感が3カ月以上続き、安静にしても回復せず、教育や社会活動の面での機能が著しく低下する疾患とされる。階段を上ったり、読書したりといった軽い作業でも急速に疲労する。
また体の痛みや、早寝早起きができないといった睡眠のリズム障害などの症状もある。
同センターの研究グループは、小児慢性疲労症候群の発症の仕組みなどを解明するため、まず特徴的な症状である「同時に複数の課題を処理する際に注意配分機能が低下する」ことに注目。
その時の脳の働きを調べることにした。
小児慢性疲労症候群の生徒15人、健常の生徒13人を対象に、複雑なテストを実施。
「まりこは」「みつめた」「あおい」「うみを」などと、ひらがなの言葉を次々と表示し、文章の内容を理解しているかを調べるとともに「母音が含まれているか」についても質問。
2つの課題を同時にこなす際、脳の働きがどう変化するかを、脳の活動状態を表示する機能的磁気共鳴画像診断法(fMRI)を使って調べた。
その結果、健常の生徒は脳の左側の前頭葉など2カ所で効率的に情報を処理していた。
ところが、小児慢性疲労症候群の生徒は、左側だけでなく右側の前頭葉など計6カ所の部位を活性化させていた。
有病率2・3%
研究を行った、同センターの水野敬上級研究員によると、課題を処理する脳の活動部位が広範囲にわたっているため、過剰に脳神経が働いて、さらに疲労が増すと考えられるという。
小児慢性疲労症候群の子供は、疲労により脳の機能が低下しているというよりは、脳の機能が低下するのを補おうとして、脳を過剰に活動させている可能性があるという。
厚生労働省の研究班によると、小児慢性疲労症候群の有病率(国内の小中学生)は0・2~2・3%。
不登校との関連も指摘されており、不登校児の60~80%が小児慢性疲労症候群の診断基準を満たしている、という見方もある。
渡辺恭良センター長は、「睡眠をしっかりとるなどして疲労回復することで脳の過活動を抑えたり、サプリメントなどを投与し脳神経にエネルギーを供給することで機能回復を早めたりするなど、今後は治療法の研究を続けていきたい」としている。