人と暮らしのあらゆる物が香り漬けとなり、やがて建築物、道路、大気が汚染された。
私は近くの里山を歩くが、山の中にも香料スポットがある。
雨や風に運ばれた香料成分が、地形や気象の微妙な変化でそこに降りるのであろう。
降り始めの雨が、時々香料臭を持って降りてくることに気づいてはいたが、今年、大雪が積もった朝、庭も道路も一面真っ白な世界に香料臭が立ちのぼっていた時は驚いた。
もはや、使用上の「注意」や「配慮」のレベルではない。
香料は、10種から数百種もの物質を混合、溶剤も添加されて作られている。
香料にはアレルゲンとなる物質が多く皮膚炎や喘息を誘発し、また偏頭痛を誘発する他、神経毒性や内分泌かく乱作用、変異原性、発がん性、発がん促進作用や異物排出能力阻害作用等を有することが報告されている*3。
シャンプー等製品含有量は0.1~1%程度でもアレルギー性接触皮膚炎を頻繁に起こす香料や陽性率の高い香料があるのに、日本では、製品表示は「香料」と一括表示で成分を明示しなくてもよく、安全性は業界の自主基準のみで明確な規制がない。
香料はガス状や浮遊微粒子状のアレルゲンとなる可能性もあり、揮発した成分は呼吸を通して体内に取り込まれるのに、成分の吸入毒性についてほとんど検討されていない。
EU(欧州連合)では「化粧品規則」により、香料について26種をアレルギー物質として、製品ラベルへの表示を義務化している。
欧州委員会消費者安全科学委員会は意見書でさらに101の物質の表示義務化や12物質の配合率を0.01%以下とすること等を提言している*4。
また、米国でも着香製品による健康被害が深刻化、自治体職員や職場の香料禁止や自粛の方針に取り組む自治体が増えてきた。
カナダのノバスコシア州では、州都ハリファックス地域都市が無香料の啓発プログラムを実施、香料不使用の方針を市の職場から公共スペースに拡大して、学校や図書館、バスでの着香製品の自粛を推進、この取り組みは州にも拡がっている。
2013年10月4日、私たちは、文部科学省に「学校等における香料自粛に関する要望」を香料自粛を求める会他4団体で提出、翌年1月3日には厚生労働省へ「香料の健康影響に関する調査および病院・保育園等における香料自粛に関する要望」を、5団体で提出した*5・6。回答はまだない。
香料規制の強化は、今後さらに国際的な流れになっていくであろう。
国内でも、安全性審査を充実させ、無制限に宣伝させず、業界の自主規制に任せて野放しになっている香料製品の氾濫に歯止めをかけ、規制に乗り出すことが急務である。 (2015年10月9日記)