日本では2002年2月に文部科学省が、「健康的な学習環境を確保するために-有害な化学物質の室内濃度低減に向けて-」のパンフレット[6]を公表し、学校施設で留意すべき主なポイントを要約しました。
発生源となる可能性のある材料、厚生労働省の室内濃度指針値、建物整備時における発生源の持ち込みや換気に対する留意事項、日常生活時における換気励行に関してわかりやすく概説されており、この問題に関する啓蒙パンフレットとして活用できます。
さらに文部科学省は、2003年度の概算要求の中で、子供たちの安全及び健康に関する現代的課題への対応として、-学校すこやかプラン-「シックハウス対策参考資料の作成」[7]の項目に対して714百万円を要求しています。
シックスクール症候群などの学校環境衛生に対する日本の取り組みは、ここ数年で急速に活発化し、学校環境衛生の基準、有害化学物質の室内濃度削減に向けた啓蒙パンフレット、次年度に予定されているシックハウス対策参考資料の作成など、より具体的な取り組みが行われるようになってきました。
しかしながら、学校環境衛生の基準にある4種類の化学物質の室内濃度指針値は、あくまで指針値であり、それ以下の濃度であれば安全と言えるものではありません。
これらの指針値を下回る極めて微量の化学物質に対して過敏症状をきたす化学物質過敏症[1]を訴え、学校に通えない子どもたちが存在することも重要な課題であり、また、何らかのアレルギー疾患やアトピー疾患の症状を有する子どもたちが、そのような症状を訴えることが多いことも考えていかねばなりません。
このようなことからも、たとえ指針値以下の室内濃度であったとしても、のどや眼などの刺激、めまい、頭痛などの体調不良や化学物質に対する過敏症状を訴える子どもたちが存在することは、決して異常なことではなく、むしろその存在を冷静に受け止め、それぞれの子どもたちに応じた対策を行い、一人でも多くの子どもたちが安心して通える学校環境にしていく必要があります。
Author: Kenichi Azuma
<参考資料>
[1] 厚生省生活衛生局企画課生活化学安全対策室:「室内空気汚染問題に関する検討会中間報告書-第1回~第3回のまとめ」, 26 June, 2000
http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1206/h0629-2_13.html
[2] 文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課:学校における室内空気中化学物質に関する実態調査, 21 December, 2001
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/12/011232.htm
[3] 文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課:「学校環境衛生の基準」の改訂について, 5 February, 2002
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/02/020202.htm
[4] USEPA: IAQ Tools for Schools Kit,402-C-00-002, December 2000
http://www.epa.gov/iaq/schools/
[5] J. J. Smith: “School Children Inhale Toxics Daily, Senate Told”, Environment News Service (ENS), 1 October 2002
http://ens-news.com/ens/oct2002/2002-10-01-10.asp
[6] 文部科学省:健康的な学習環境を確保するために-有害な化学物質の室内濃度低減に向けて-, February, 2002
http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/020601.htm
[7] 文部科学省:平成15年度の概算要求主要事項, 30 August, 2002