3. 「環境保全型」の中身について
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環境保全型の農業で、農薬の空中散布はできますか?
農薬の空中散布は、散布される農薬の濃度度が高いことや、霧状の飛沫が流れていくエリアが広がる恐れなどから、環境面の問題が指摘されています。
このため環境保全型の一つである特別栽培では農薬の空中散布をどのように取り扱っているのか調査しました。
農薬の空中散布を行っている場合、各都道府県の基準(規格)では、環境保全型農産物の認証を取得することができるかどうかを調査したところ、できるとしたところが37 県にのぼり、できないとしたのは、東京都、大阪府と岡山県の3 都府県のみでした。
また、未回答・該当なし、とした県の中で、高知県は、「県の基準による認証は行なっていないが、高知県園芸連のエコシステム栽培という認証では、空中散布を行なっている水稲は含まれない」と回答しており、神奈川県は「神奈奈川県内で航空防除(農薬の空中散布)は行われていない」との回答がありました。
◾ ネオニコチノイド系農薬は使えますか?
ネオニコチノイド系農薬は、ミツバチの消失や、大量量死の原因の一つとされ、ヨーロッパでも2013 年年から使用規制が始まり、アメリカのオレゴン州では花粉媒介者保護を目的として2013 年に暫定的な規制措置、ワシントン州シアトル市議会でも2014 年9月、ネオニコ系農薬の使用と購入を禁止する決議が全会一致で可決しています。
国際自然保護連合(IUCN)に助⾔言する科学者グループ浸透性農薬タスクフォースの報告書でも、水に溶けやすく、環境に広がりやすいこの種の農薬は「土壌と堆積物、地下水と地表水に、(中略)大規模な汚染を引き起こし、蓄積の可能性をもたらす。」と指摘し、「規制当局がネオニコチノイドとフィプロニルに対して予防原則とより厳格な規制を適用し、全世界での段階的廃止の計画を立て始めるか、少なくとも世界規模における使用を大幅削減するための構想を立て始めることを強く提言」しています。
しかし、日本での使用はこの15 年で3 倍にものび、厚生労働省が農産物への残留基準の引き上げを検討している最中です。
このため、今回のアンケート調査では、各都道府県で認証する特別栽培農産物に、ネオニコチノイド系農薬は使⽤できるかどうかを尋ねました。
その結果、「d. すべてできる。今後も特別栽培の農産物への使用を制限する予定はない」とする都道府県が36 にのぼりました。
制限する予定はないとする理由については、多くの県が、「国が農薬登録している農薬だから制限する必要はないから」、「特別栽培のガイドラインでは農薬の散布回数を規定しているだけで、種類を規定していないから」制限する必要はない、という趣旨の回答をしています。
「農水省の調査結果や消費者の不安の度合いなど今後の動向を注視していきたい。」(北北海道)「一部農薬抵抗性発達の理由でネオニコチノイドの使用を制限しているが、(中略)今後、安全性について、国から科学的根拠が示されれば、検討していく。」(静岡県)
といった回答もありましたが、独自の取り組みがみられませんでした。
Q. 県で認証する特別栽培農産物にはネオニコチノイド系農薬は使用できますか?
A. すべてできるが、見直しを検討しているものが一部ある:0 県
B.使用できるものとできないものがある:0 県
C. すでに一部で使用していないが、不使用の範囲を広げる可能性を検討している :0 県
D. すべてできる。今後も特別栽培の農産物への使用を制限する予定はない:36 県
未回答11 県(山梨、富山、岐阜、岡山、愛媛、高知、宮崎、愛知、滋賀、三重、長崎)
農林水産省によれば、特別栽培ガイドラインは、それを満たしていることを本人や第三者が記録やほ場で確認すれば表示ができるというもので、県の認証の内容を規制するものではない、としており、都道府県独自で認証する場合には、農薬を選択的に制限することを妨げてはいません。
ネオニコチノイドを使わないものに都道府県レベルで認証を与えることも不可能ではありません。
群馬県の回答では、県内の自治体で、有機リン系およびネオニコチノイド系農薬を使用しない農産物への認証制度度を実施しているとの事例が紹介されています(次項参照)。地方自治体レベルで使用を禁止する
ことは難しくても、自治体が認証する特別栽培などの農産物の認証条件を設定することはできるので、現場から積極的な試みを期待します