細胞や組織をかく乱する「シグナル毒性」とは-2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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 さらに未来への影響として、以下のような「子孫
に影響を与える毒性」が考えられます。
〈子孫に影響を与える毒性〉
1.子どもができなくなる
2.子どもの行動が異常になる
3.先天的な障害がある子どもが産まれる
  ほか
 毒性学の役割は、身の回りの物質を私たちが身体に取り込んだ際にこうした健康影響をもたらすことがないか否かを未然に検討することです。

これまでに毒性部が関わった物質には、食品(水銀やカドミウムなど)、サプリメント、食品添加物、飲料水(ヒ素など)、香料、化粧品原料、医療機材、歯科材料、医薬品、農薬、殺虫剤、防虫・消臭剤、難燃剤、接着剤、塗料、洗浄剤、燃料、新素材(ナノテク素材など)、化学合成品、可塑剤、電池・コンデンサー、自動車排ガス、ごみ焼却ガス、たばこの煙、アスベスト、シックハウスなどがあります。


細胞や組織を破壊する毒性
 私たちの体は、細胞からできています。

細胞が一定のパターンで集まった構造を組織と言います。

毒性があると、細胞や組織が破壊されます。毒性には、急性毒と慢性毒性があります。

急性毒性があると、細胞に酸素欠乏、エネルギー欠乏などが起きてすぐに死んでしまうことがあります。

慢性毒性があると、細胞の活動に必要な部品の供給が低下したり、老廃物が蓄積したり、線維化や線維症をもたらすような組織の異常な修復、腫瘍など細胞の異常な増殖などが起こり、直ちに死ぬわけではありませんが身体にさまざまな不調をもたらします。
 従来型の毒性では、ある物質が生体分子に直接的に作用してその機能を障害します。

例えば、フグ毒。

フグ中毒は運動神経と筋肉の間のシグナル遮断によって起こります。

したがって意識があっても筋肉が動かないことで死に至ります。
 他方、シグナル毒性(受容体原性毒性)は、化学物質が受容体に結合することにより、受容体からのシグナルをかく乱することで障害作用を現します。
神経のシグナルのかく乱の例としてはサリンや農薬があります。神経細胞間のシグナルのかく乱や、脳の機能のかく乱(過剰刺激と麻痺)が障害をもたらします。

シグナル遮断と子どもの発達への影響
 化学物質による影響ではありませんが、シグナルの遮断による障害の例として、形態覚遮断弱視があります。

2歳以下の子どもに2日以上の眼帯を使用すると弱視が起きるというものです。

大人が2日以上眼帯を使用してもこのような問題は起こりません。

これは、目からのシグナルがある時期に遮断されると、大脳の視覚野が変化することを意味しています。

子ども(胎児・新生児を含む)の脳では、視覚野に限らず、ある特定の時期に、特定の場所で、シグナルの変調があることで、こうした障害が引き起こされる可能性が十分にあると考えられます。

化学物質によるシグナルかく乱の影響
 シグナルが遮断されたときだけでなく、神経伝達物質のまねをする化学物質による間違った信号が流れることなどにより、シグナルがかく乱されたときにも、脳や神経の働きに異常が生じると考えることができます。
 例えば、エストロゲン(女性ホルモン)受容体が胎児、新生児の脳内のある部分の神経細胞にあります。

そこに女性ホルモン作用を有するビスフェノールA(BPA)が飲食を通して体に入るとエストロゲンに比べると弱い女性ホルモン作用(エストラジオールの5000分の1)にもかかわらず受容体に結合します。
 BPA は大人のラットには50mg / kg まで食べさせても何も起こらないことが調査されています。

しかし、後で紹介しますが、子どもや胎児が(母親経由で)シグナルが伝わる20μg / kg を食べたことにより何らかの影響(毒性)が見られ、今まで知られていたよりもずっと低い用量で影響が見られる、ということがわかってきまた。

なぜ、母親には影響がない低用量でも、子どもには影響が出ることがあるのでしょうか。


子どもの発達とシグナル毒性の特徴
 子ども(胎児・新生児を含む)の脳は、DNA の設計図どおりに部品(神経細胞など)が組み上がっていきます。

それはコンピューターの部品と配線が設計図通りに組み上がっていく過程に似ています。

異なるのは、コンピューターは電源オフの状態で組み上げていくのに対し、子どもの脳は電源をオンにしたまま、脳の部品が組み上がると同時に、信号を流しながら神経回路を調整していることです。

つまり、休まずシナプス(回路)を結合させ、シグナルを送って情報を伝達しつづけているわけです。
 また、DNA の設計図には必要以上にたくさんのシナプスをつくるように指示が書かれています。

そして発達の段階で、適切なシグナルが来るシナプスは残り、来ない(使われない)シナプスは消えていきます(シナプス競合説)。

こうした脳の形成過程で特定の時期に、特定の場所でシグナルのかく乱があると、後に脳や神経の働きに異常が生じます。
 ヒトには外からのいろいろな影響に打ち勝って体の調子を一定に保つ恒常性維持機構(ホメオスターシス)が備わっています。

この機能は神経系、内分泌系(ホルモン)系、免疫系からなり、この3つの系がホルモンや神経伝達物質、その他の「シグナル」物質で常に連携を取り合って環境の変化に対応しています。
 どの系も胎児・新生児・小児期に段階的に構築されますが、子どもでも同様に外からの色々な影響を打ち消す力を持っています。

しかし、子どもは成長しているために受容体を直撃するタイプの影響を受けると、その影響がシグナル回路の異常として残ってしまう場合があります(受容体原生毒性、あるいはシグナル毒性)。
 シグナル毒性の特徴は神経系、免疫系、内分泌系に共通の特徴である記憶する系を対象としており、「積み上げ」の途中でのかく乱の影響は完全には修復されない場合があるという点にあります。

かく乱のレベルが強ければ明らかな障害が生まれた直後から見られます。

弱いレベルで積み上げがかく乱されると、一見正常に見えても高度な機能の異常が成長後に顕在化する場合があります(遅発性毒性)。

これは積み上げ途中の異常の修復が完全に行われず、積み上がった後で直せない部分が残ってしまうことがあるからです。