・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/
・ミツバチだけでなく、赤トンボも絶滅の危機
―環境省が初めて農薬(ネオニコ・フィプロニル) の影響調査―
理事 水野 玲子
赤トンボの代表ともいえる「アキアカネ」の減少は以前から指摘されてきたが、環境省は2014年9月、稲作に使用される農薬がトンボの生態に及ぼす影響について実態調査を開始すると発表した。
今回の調査は、国立環境研究所が全国7カ所の池や、湖沼の水や堆積物の残留農薬、トンボへの農薬の影響を調べる予定であり、研究代表者の五箇公一氏は、『クワガタムシが語る生物多様性』(創美社、2010)の中で、水田への育苗箱施用剤として使用されるネオニコ(イミダクロプリド)やフィプロニルによって、水生生物が大打撃を受けることを以前から指摘していた。
五箇氏は今回の研究で、欧州食品安全機関(EFSA)におけるリスク評価の妥当性も検証するとのことだが、EFSAは2013年末、ネオニコ系の2成分がミツバチだけでなく、子どもの脳の発達に影響を及ぼす可能性があるとする重大な警告を発している。
今回の研究で対象となる農薬は、イミダクロプリドなどのネオニコチノイド系農薬、そして、同じく浸透性農薬としてミツバチ大量死影響したとヨーロッパで注目されているフェニル・ピラゾール系のフィプロニルである。
すでに、水田での苗箱に使用されるこれらの成分を含む殺虫剤が水生生物に与える影響の国内での研究は進んでおり、2010年にExTEND2005環境省の野生生物の生物学的知見発表会で、石川県立大の上田哲行氏らによって「アカトンボ減少傾向の把握とその原因究明」と題する研究発表、また宮城大の神宮字寛氏と上田氏との共同研究「フィプロニルとイミダクロプリドを成分とする育苗箱施用殺虫剤がアキアカネの幼虫と羽化に及ぼす影響」の論文(農業農村工業会論文集、2009)などがその危険性を指摘している。
ネオニコ系の2成分を含む農薬を使用した水田ミツバチだけでなく、赤トンボも絶滅の危機―環境省が初めて農薬(ネオニコ・フィプロニル) の影響調査―は、不使用の水田と比較して、ヤゴの羽化率が3割と低く、またフィプロニル製剤を使用した水田ではヤゴは全く羽化しなかったという。
環境省がトンボなど生物をまもるために農薬を問題とするのはきわめて異例であり、この農薬調査の結果、環境省が農薬の生態系への影響についてはっきりと危険性を評価し、農水省や農薬メーカーに意見することがあるとすれば、それはネオニコ問題にとって大きな進展となるだろう。
日本の生態系、トンボが舞い、ホタルやハチ、チョウがあたりまえに見られる環境を取り戻すために環境省の今回の調査に期待したい。
水田に散布した農薬による赤とんぼの激減を追ったDVD、2012年
制作:「赤とんぼがいない秋」制作委員会 演出・
撮影・編集 岩崎充利 (ミツバチからのメッセージのDVD制作に続き、ネオニコ農薬やフィプロニルに危険性を訴える作品)