・検査機器も電子機器
問診以外に、検査で異常が出れば、電磁波過敏症の患者さんの診断が確実になりますが、ほとんどの検査機械は電気器具です。
だから、患者さんがその電気器具から出る電磁波に反応していれば、負荷試験をやってもあまりハッキリしないことになります。
そこで、NIRO(近赤外線酸素モニター)という装置を使い、近赤外線で脳の酸素濃度を測って、電磁波が影響するかを調べました。
近赤外線も電磁波ですが、通信用の電磁波などとは違います。
この機器で、電磁波による過敏症の人の血流変動を確認できる可能性があることがわかりました。
しかし問題もあって、先ほどの話と同様、健常者も変動する可能性があります。
また、この装置は脳の表面から1cmぐらいまでしか測れません。それより奥へは近赤外線が通りませんから。
だから、患者さんが一番訴える不定愁訴に関係が深い大脳旧皮質の検査には使えません。
電磁波負荷試験は、これまで31の研究報告がありますが、そのうち24は過敏症と健常者を区別できませんでした。
7報告は、負荷試験で異常が検出されましたが、うち2報告は実質同じ報告なので、6報告しかありませんし、この6報告も確実な結果とは言い切れません。私も電子機器を使わない方法などで試験したいと思っていますが、まだうまくいっていません。
今のところはっきりした証拠がつかめないので、電磁波過敏症の診断書を書けないのです。
ただし、私たちの体にはマグネタイト(磁鉄鉱)が散りばめられているので、負荷試験で「普通」の人も影響されるのは当然なのです。
マグネタイトについては10年ぐらい前からわかっているのに、研究はなかなかその先へ進んでくれません。
電磁波過敏症の対策
では、電磁波過敏症の人はどうすれば良いのか、ですが、過敏症の人だけでなく、「思い込み」の人も電磁波を浴びて何らかの不調になるのは当然ですし、その人たちも過敏症の人と同じような苦痛を感じているわけなので、やはり対応が必要です。
電磁波曝露の軽減が大事です。
しかし、なかなか大変です。
電磁波は私たちの日常生活でそこらじゅうで飛んでいます。パソコンのLANも電波で飛ぶ時代になっています。
携帯電話が通じない所も、山奥の谷筋など以外にはありません。
山奥で暮らせば確かに電磁波は減りますが、土砂崩れやクマさんが怖いです。
電磁波対策住宅
曝露を軽減する方法を図に示しました。
ベッドの下に金属製のものを敷いてアースをとる。
私たちが脳波を調べるときも、周囲から電磁波の雑音に入ると調べられないので、細かい金網の上に患者さんを寝かせて脳波をとります。
ただし、アースをとらないとだめです。
電磁波には、電場と磁場があります。
電波は、屋根にガリバリウム鋼板を張ったり、外壁に薄い鉄板を張ったり、金属製のブラインドを付けるなどで跳ね返せますが、必ず全部アースをとらないとだめです。
磁場を跳ね返すのはなかなか難しいです。
透磁率の高い材料(鉄が一番安くて透磁率が高いです)を厚めに敷くと、家の中の影響が少なくなります。
私たちの家は、壁の中に電線が2~3kmは走っており、過敏症の人は影響を受ける恐れがあります。
家庭内の配線は普通はプラスチックのチューブの中に走らせますが、鉄パイプの中を通して鉄パイプからアースをとると電磁波をカットできます。
欧米のコンセントはアースがとれるよう三つ口ですが、日本は二つ口です。日本は100Vだから感電しても死ぬことはないとアースの口を落としたそうです。
いつの日か三つ口にしてもらえると、過敏症の人も相当助かると思うのですが。
そして、使わないときはコンセントを抜く。
なかなか厄介で、全館でこれをやるのは大変ですから、1部屋だけでも対策をして、電磁波過敏症になった方はそこで暮らすのが良いかもしれません。
鉄で棺おけを作って、その中で寝れば電磁波対策としては一番ですが、ちょっとドラキュラじゃあるまいし、そういうところで暮らすと鬱が出てきますので、やはり普通の環境で暮らすのが良いです。
人間には適応能力がありますし、電磁波をゼロにするのは不可能ですので、減量作戦でやっていただきたいと思います。