スマートメーターの双方向通信機能により、月に1回の割合で検針員がユーザー宅に訪問する検針作業や、引越し時に現地で実施する配線接続作業が不要になった。
電力会社にとっては、スマートメーターの導入により、人件費の削減と運営の効率化が期待できる。
さらに、スマートメーターで電力使用量をリアルタイムで監視できるため,電力の流れを細かく把握し,送電量をより的確に調整できるようになる。
一方で消費者は、デジタル化によりリアルタイムに電力消費量を把握・分析できるようになった。
いわゆる、電力消費量の「見える化」により、節電・電気料金削減のツールを得たことになる。
■細かな使用データが一目瞭然
SDG&Eを例に取ってみよう。SDG&EのWebサイトに行き、自分のアカウントにログインすると、様々な電力消費のデータが表示される。日別や月別の電気使用量と料金の一覧表示、過去のデータとの比較グラフ、Excel(エクセル)ファイルのデータダウンロードが可能だ。
さらに、住所や住宅タイプが似ている家庭との電気使用量の比較、家電別の電気使用量などのデータなどが集まっている。
SDG&Eが提供するリアルタイム電力消費データ(写真:SDG&E)
このほか、月初からこれまでに使用した電力量や、あと何kWh使用すると次の料金段階に移行してしまうか(省エネルギー推進などの目的から、電気の使用量に応じて料金単価に格差を設けた制度がある。
使用量が増えると単価が割高になる)、あと何日で使用期間が終わるかなども分かり、消費者の節電を促している。
1日の電気消費量の設定や、月ごとの節電ゴールなども設定でき、進捗度合いを電子メールで自動的に知らせてくる。
SDG&Eは2014年夏、ある特定の日の指定時間内に電気消費量を削減したり需要をシフトした顧客に、電気料金ディスカウントを実施することで、リアルタイムのデータ収集機能を生かした。
■2万ユーザーが撤去要望
そんな中、スマートメーターの設置を拒むユーザーが続出し、問題になっている。
例えばメリーランド州の電力会社PEPCOは、これまでに約57万台のスマートメーターを設置したが、1000件以上のスマートメーター撤去の要望が来ているという。
同州のBaltimore Gas&Electricも、120万の電力契約口のうち、2万件が同じようにスマートメーター撤去を希望した。
こうした中、州公益事業委員会がスマートメーター導入を承認したメリーランド州は、「スマートメーターを導入しないと特別料金を課す」という方針を打ち出した。
2013年6月にスマートメーターの導入を承認したばかりのイリノイ州でも、似たような事態が発生している。
さらにスマートメーターの導入率が高い、カリフォルニア州やネバタ州、オレゴン州でも、市町村レベルで問題化している。