・8.2 ヨーロッパ
8.2.1 法律と認知
本報告書の準備にあたり、カナダとアメリカの化学物質管理に関する環境機関又は行政機関とともに、いくつかのヨーロッパ諸国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ドイツ、オランダ、イギリス、アイルランド、フランス、オーストリア、ベルギー)に対し、MCSに関する現在の政策、可能性ある戦略、及び新たな取組みに対するアイディアと計画に関する情報の提供を依頼した。
オーストリアとベルギー以外の全ての国は回答した。MCSは全ての国で知られているが、それらのどこの国においても、それ自身は疾病としては認知されていない。
イギリス保健省(現在は保健局)の下、選ばれた専門家からなる特別委員会である環境化学物質ユニットは、MCSに関する全ての入手可能な文献に目を通した。
可能性ある疾病機序を記述する、又はこの課題に関しさらなる調査を勧告する十分な証拠は見つからなかった。
委員会はMCSに関する将来の展開はきちんとフォローされるべきと勧告した。
MCSはこれらの諸国のどこからも疾病として認知されておらず、どのような予防措置もとられていない。
いくつかの諸国では環境当局がその国の環境医学の専門家/権威と見なされているが(スウェーデン、ドイツ、オランダ)、一方、アイルランド、イギリス、及びフランスでは労働衛生当局/研究所が担当している。
問合せは、適切な部署に送付されない、又はある国々ではこの比較的新しいやっかいなことがらを取り扱うのに誰が適当なのか不明確であるために、恐らく、回送されている。
環境医学におけるスウェーデン当局はMCSの罹患率の全国的な調査を実施した(結果は受領していない)。
ドイツ当局は保健省と環境省で責任を分担している
。保健省はMCSの臨床的定義に責任を持ち、環境省はMCSに関連する健康に及ぼす化学物質の影響に責任を持つ[5]。
両省は、ロバート・コッホ研究所(国立健康研究所)及びUmweltbundesamt (環境保護局)からそれぞれ支援を受けている。
Annex H はMCS調査のリストであり、2002年現在で終了しているか、あるいは継続中のものである。これらの調査はMCSの原因と進展を描くためのものであり、調査、診断、及び治療に用いられる方法の品質管理及び評価のために役に立つ。
ドイツ保健省はMCSを含む環境病の診察及び治療の能力を増強している。
フランス労働環境研究所(Institut National de Recherche et de Securite, INRS)はMCSを匂い化学物質不耐性症候群(SIOC)と呼んでおり、診察、診断、及び治療は労働医学病院で実施されている(4.1節参照)。
8.2.2 その他の活動
スウェーデンとドイツは環境病のための臨床環境医学センターを持っているという点で異例である。
環境病の患者の診察と治療のためのいくつかの”Ambulanz”センターがドイツに設立された。
患者とAmbulanzの医師によって述べられる意見に基づき、少なくとも月に一度は、MCS問題がメディアで討議される。
メディアからの情報で、多くの人々が、環境病になることを恐れて、診察のために自身の医師を訪れるようになった。
スウェーデンのウプサラにある環境労働ストレス・センター(CEOS)はMCS、電気アレルギー、及びストレス関連の病気の人々を治療する。
8.2.3 結論
他のヨーロッパ諸国の環境当局はMCSを知っているが、これに関して何も特別なことをしていない。
スウェーデンとドイツでは保健行政の環境医学部門がMCSに関する公共サービスを行っている。
両国は環境病の治療のための臨床環境医学センターを持っており、一般的に人々の間で環境病が知られている。
8.3 デンマークの状況
MCSはデンマークでは正式名がない。
産業医はそれを匂い過敏症又は溶剤不耐症と呼ぶ。
その症状は公式には疾病と認知されていない。