・意思決定は自分自身で
自主的措置への信頼は、化学物質規制に対するアメリカのアプローチの品質優良証明である。
多くの場合、それがアメリカの消費者製品から有害化学物質を除去するという時には、製造者や小売業者自身の方針-しばしば消費者の要求、又は米国以外の国の又は州や地方レベルの規制により駆り立てられる-が米連邦政府の政策より早く動いている。
6月3日、カリフォルニアに拠点を置く医療保険会社カイザーパーマネンテ(Kaiser Permanente)は、年間3,000万ドル(約30億円)ほどの費用がかかる全ての新規家具の購入は、化学的難燃剤を使用しないものとすると発表した。
同日、パネラブレッド(Panera Bread)は、同社の1,800のベーカリーカフェ で提供する食品は 2016年末までに人工添加物の使用を止めると発表した。米連邦法では制限しない化学物質を、自社製品では禁止する方針を持つ大きな製造会社や小売業者はいくらでもある。
少し例を挙げると、Nike, Walmart, Target, Walgreens, Apple そして HP などである。
これはまた多くの化粧品成分-たとえば、マニキュア液で使用されている化学物質-についても真実である。
潜在的な内分泌かく乱作用及びその他の有害健康影響を懸念して、EU が2004年にマニキュア液からフタル酸ジプチル(DBP)と呼ばれる可塑剤を禁止した後、多くの世界的なブランドが彼らの成分を変更した。
従って、FDA はその使用に関する規制を発していないが、DBP は現在アメリカで売られているマニキュア液からはほとんど見い出されない。
実際、FDA は、その毒性のために特定の少数の成分だけを化粧品から禁止している。
産業界は豊富なテストを実施するが、現在の法は、市場に出る前に化粧品成分がある有害健康影響をもたらさないことを求めていない。
”化粧品規制は、ここアメリカよりEUの方がもっと厳しい”と環境防衛基金(EDF)健康プログラムのディレクター、サラ・ボーゲルは述べている。
アメリカの規制は、産業側の情報に大きく依存していると彼女は言う。
産業界は豊富なテストを実施するが、現在の法は、市場に出る前に化粧品成分がある有害健康影響をもたらさないことを求めていない。
(FDAの規制は、例えば発がん性物質、変異原性物質、または内分泌かく乱化学物質を明確には禁止していない)。
従って、たとえパーソナルケア製品や化粧品の産業界が、広範な自主的成分安全指針-そしてそれらを満たすための明白な動機-を持っていたとしても、それらは法的な要求ではない。
警告、助言、自主的な廃止
また、食品及び化粧品中での化学物質使用を規制するアメリカの法律は、最初は、有害性への視点からというより、むしろ混ぜ物をして品質を落とされた、不正に表示された、又は不正直に市場に出された製品が販売されることから米国消費者を保護するために開発された(この二つの目標はしばしば一致する)。
この法律はこのようにして機能してきた。
たとえば、あるヘアケア用品がホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド放出剤を美容院の従業員に健康問題を引き起こすレベルで含んでいることが発見されたときに、FDA は、その製品の潜在的な健康への有害性については適切な警告を製品の容器上又は会社のウェブサイト上に表示すべきであると述べる警告を発した。
しかし、その結果は、ホルムアルデヒド暴露の呼吸器系への有害な健康影響について、及びホルムアルデヒドは皮膚刺激物であり潜在的な職業性発がん物質であることについて多くの科学的証拠があるにもかかわらず、これらのヘアケア用品はアメリカでは販売され続けた。
TSCA の下で化学物質の使用を制限するプロセスはまた、長い年月がかかることがあり、実際今までに、わずか一握りの化学物質しか TSCA の下で禁止されていない。
FDA が、製品、又は化粧品又はパーソナルケア用品の化学成分を制限するのに、一般的に長いプロセスが必要となる。しばしば FDA が行うことは、多くの石けんで使用されている抗菌成分トリクロサンで最近なされたように、助言を発することである。
一方、健康と環境への有害な影響についての科学的証拠の増大及び、トリクロサンは手洗いをもっと効果的にすることにならないかもしれないという意見に基づき、Johnson & Johnson や Procter & Gamble など、多くの製造者がこの成分を彼らの製品から除去することに決めた。
今春、ミネソタ州は法的にトリクロサンの使用を制限する最初の州となった。
TSCA の下で化学物質の使用を制限するプロセスもまた長い年月がかかることがあり、実際今までに、わずか一握りの化学物質しか TSCA の下で制限されていない。
その代り、TSCA を所管する環境保護庁(EPA)はポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)と呼ばれる難燃剤で行ったように、しばしば会社とともに自主的な廃止プログラムを共同で実施するが、これもまた完了するのに数年かかる。
一方、電子機器から事務用品、スポーツ用品、自動車部品、流行の衣類などを製造するアメリカの会社は、国際的な規制、国内政策、及び消費者の要求とともに、新たに出現している科学をフォローし、よく報告されている有害性をもつ化学物質の使用を排除する方針を立てて、製品を開発している。
これらの自主的な取り組みは、懸念ある化学物質の含有が少ない製品を製造するようになるが、一方で、それらには限界がある。そのひとつは透明性である。
会社はそのような方針の詳細を常に完全に開示するわけではないということである。もうひとつは、そのような方針は市場にある全ての製品をカバーしているわけではなく、低価格で購入する多くの消費者には同等の保護がないという状態をもたらす。
政府の解決よりもむしろ市場に従うというアメリカ人の好みであるとして、”それは精神的な何かである”とワーナー・バブコック・グリーンケミ. ストリー研究所(Warner Babcock. Institute for Green Chemistry)の所長ジョーン・ワーナーは述べている。