・”アメリカとヨーロッパの政策アプローチは非常に異なる”。
Stacy Malkan
当然のことながら、その答えは複雑であり、結論は明快さから程遠い。
しかし明らかなことのひとつとして、”アメリカとヨーロッパの政策アプローチは非常に異なる”と Campaign for Safe Cosmetics(安全な化粧品キャンペーン)の共同創設者スタシー・マルカンは述べている。
予防が勝る
欧州連合の化学物質管理及び環境保護政策の重要な要素であり、EUのアプローチと米連邦政府のそれとの明確な相違のひとつは、予防原則と呼ばれるものである。
この原則は、欧州委員会によれば、”予防的な意思決定を通じて、より高いレベルの環境保護を確実にすることを目指す”。
言い換えれば、人の又は環境の健康に対する危険の本質的な説得力のある証拠があるときには、科学的な不確実性があっても、予防的行動がとられるべきであるということである。
対照的に、米連邦政府の化学物質管理へのアプローチは、規制的行動がとられる前に危害の証拠が実証されなくてはならず、そのために非常に高いバーを設定している。
これは、アメリカで商業的に使用される化学物質を規制する連邦法である有害物質規制法(TSCA)に当てはまる。
REACH(化学物質の登録、評価、認可及び制限)と呼ばれる商業化学物質を規制するヨーロッパの法は、ある化学物質の使用が承認される前に、欧州化学物質庁に毒性データ一式を提出することを製造者に求める。
米連邦政府の法はそのような情報は新規化学物質について提出することを求めるが、既に使用されている既存化学物質については環境及び健康への影響についての知識に大きなギャップを残したままである。
化粧品、又は食品添加物、又は農薬は他の米国法により規制されるが、これらの法律もまた、危害の立証に重い負担をかけ、TSCAと同様に予防的アプローチを導入していない。
同じ研究で異なる結果
実際問題としてこれは何を意味するのか? 赤色40号、黄色5号及び黄色6号の場合には、それは同じ証拠-人工的に着色された食品を食べた子どもたちに多動症が増加するように見えたとするイギリスの研究者らによる2007年の二重盲検調査-を検討した結果、ヨーロッパとアメリカの規制当局は異なる結論に達したということを意味する。
イギリスでは、この調査は英当局にこれらの着色料の使用を禁じさせた。
EUは、それらを含む製品上に警告表示をすることを求める選択をした結果、その使用が大いに低減し、ワシントン D.C. の非営利組織 CSPI (公益科学センター)の上席科学者リサ・レファーツによれば、この調査は CSPI が多くの食品着色料について食品医薬品局(FDA)に請願することを促した。
しかし 2011年に発表されたこれらの着色料のレビューの中で、FDA は、イギリスの調査は個別の着色料よりむしろ着色料の混合物の影響を見たという理由で、この調査は決定的ではないと結論付け、したがってこれらの着色料は使用が許された。
FDAの承認が食品添加物には必要であるが、FDAは、製造する化学物質の承認を求める会社、又は食品添加物の安全性を決定する時に使用したいと望む会社によって実施された調査に依存していると、天然資源防衛協議会(NRDC)上席科学者マリセル・マフィニ及び NRDC の上席弁護士トム・ネルトナーは2014年の報告書 Generally Recognized as Secret (広く知られた秘密)の中で記している。
”私が知っている他の先進国の中で、食品中に直接入れる化学物質の安全性を会社が決定することができるというシステムを持つ国はアメリカ以外にない”と、マフィニは述べている。これらの物質をカバーする古くからの法律-1958年 食品医薬品化粧品法への食品添加物追加修正-は、”TSCAにおけるよりもっと重い化学物質のテストを求めている”とネルトナー述べている。
”自主的措置への信頼は、化学物質規制に対するアメリカのアプローチの品質優良証明である。
二人は、他の国では安全ではないとみなしているが、アメリカでは許されている多くの食品添加物を指摘する。
これらには、”生地改良剤”、すなわち小麦粉の強度又は弾力を強化するための添加剤もある。
国際がん研究機関(IARC)はそのような化学物質のひとつである臭素酸カリウムを可能性ある発がん性物質(訳注:グループ2B:ヒトに対しての発がん性の恐れがある)であると考えている。
このことは、EU、カナダ、中国、ブラジル、及びその他の諸国でその使用の禁止をもたらした(訳注:日本では、パンでの使用は禁止されておらず、使用しているパンメーカーもあるようである。ウイキペディア)。
FDA は小麦粉に添加することのできるこれらの化合物の量を制限しており、パン製造者に自主的にその使用を止めるよう促しているが、禁止はしていない。
今年の初めに、サンドイッチのチェーンである Subway は、FDAにより承認されているが、その分解物は健康懸念を提起された生地改良剤アゾジカーボンアミドの使用を止めると発表して、メディアで大きく報道された。