化学物質過敏症勝訴裁判主文9 | 化学物質過敏症 runのブログ

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化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・「A 使用上の注意
a 人体に使用しないこと。
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b 誤飲を避けるため,保管及び取扱いに十分注意すること。
c グルタラールの蒸気は眼,呼吸器等の粘膜を刺激するので,眼,
鏡,マスク等の保護具をつけ,吸入または接触しないよう注意す
ること。
d 眼に入らぬよう眼鏡等の保護具をつけるなど,十分注意して取
扱うこと。誤って眼に入った場合には,直ちに大量の水で洗った
のち,専門医の処置を受けること。
B 副作用
皮膚に付着すると発疹,発赤等の過敏症状を起こすことがある。
C その他の注意
a グルタラールを取扱う医療従事者を対象としたアンケート調査
では,眼,鼻の刺激,頭痛,皮膚炎等の症状が報告されている。
b 外国において,グルタラール取扱い者は非取扱い者に比べて,
眼,鼻,喉の刺激症状,頭痛,皮膚症状等の発現頻度が高いとの
報告がある。
c 眼粘膜刺激性
9匹のウサギの片眼にサイデックスプラス28 3.5%液の
実用液0.1mLを投与し,うち投与後6匹のウサギ眼は洗浄せ
ず,3匹のウサギ眼は30秒間生理食塩水で洗浄し,眼刺激性を
検討した。投与後24時間ですべてのウサギに結膜の壊死といっ
た強い刺激性が認められ,7日目まで観察された。以後投与後洗
浄を行わなかったウサギ6匹のうち4匹が10日目までその症状
が認められた。
d 皮膚刺激性
試験品0.5mLをウサギの右背部,左背部それぞれ2カ所に
適用し閉塞し,皮膚刺激性を検討した。皮膚に対し,わずかに紅
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斑,又は水腫を形成するといった弱い刺激性が認められた。
D 取扱い上の注意
a 浸漬にはふた付容器を用い,使用中はふたをすること。
b 外国において,換気が不十分な部屋では適正な換気状態の部屋
に比べて,空気中のグルタラール濃度が高いとの報告があり,換
気状態の良い部屋でグルタラールを取扱うことが望ましい。
c グルタラール水溶液との接触により皮膚が着色することがある
ので,液を取扱う場合にはゴム手袋等を装着すること。また,皮
膚に付着したときは直ちに水で洗い流すこと。」
(サ) 平成13年5月,米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は,
「グルタルアルデヒド-病院における労働災害」と題する冊子の中で,
「平成11年に米国工業保健衛生士協会(ACGIH)において,グル
タルアルデヒドへの暴露によって生じる健康被害として,喉や肺の刺激,
喘息,喘息様症状,呼吸困難,鼻の刺激,くしゃみ,ぜーぜー息,鼻血,
焼けるような眼の刺激,結膜炎,発疹,アレルギー性皮膚炎,手の変色
(茶褐色や黄褐色),じんましん,頭痛,吐き気を指摘している。」と
報告している(甲15)。
(シ) 平成16年3月,日本消化器内視鏡技師会安全管理委員会が編集し,
日本消化器内視鏡技師会が会報の別冊として発行した「内視鏡の洗浄・
消毒に関するガイドライン(第2版)」(甲19)は,検査環境として,
グルタルアルデヒドの毒性を指摘し,「グルタルアルデヒドは,暴露に
よって皮膚炎,鼻炎,結膜炎などの原因になっている。さらに,極端に
換気の悪い環境下で高濃度のグルタルアルデヒドに曝露され続けると,
従来何ともなかった微量の化学物質に対しても,口内炎を発症し,喉や
肺に痛みを訴えるいわゆる化学物質過敏症に至る場合もある。グルタル
アルデヒドの曝露対策は空気中の濃度を極力減らすことであるが,わが
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国には法的規制がない。米国の職業安全衛生管理局(OSHA)では,
健康管理のため空気中の濃度は0.2ppmを超えないこととしている。
さらに,米国工業保健衛生士協会(ACGIH)は,グルタルアルデヒ
ド濃度を0.05ppm以下にすることを推奨している。グルタルアル
デヒドの曝露から身を守るためには,床に接した部分にグルタルアルデ
ヒド専用の排気装置を設置するか,ボックスの中で集中的に排気する局
所排気装置などを設置する。洗浄・消毒を行う際には,蒸気の吸入と皮
膚接触を最小限に留めるため,フェイスシールド(ゴーグル),専用の
マスク,防水性のガウン(エプロン),手袋(肘までの長さのもの)を
着用する。腕の部分は皮膚保護用のクリームを塗布する。グルタルアル
デヒドの曝露を避けるため,できれば内視鏡の自動洗浄機を用い,専用
の排気装置を設置する。しかし,このような設備がないところでも窓を
開けて十分な換気を図る」旨指摘している。
(ス) グルタルアルデヒドは,薬事法44条2項,同法施行規則204条
別表第3有機薬品及びその製剤20の3において劇薬として指定され,
労働安全衛生法57条の2第1項,同法施行令18条の2,別表第9の
140において労働者に健康障害を生ずるおそれのある有害物に指定さ
れ,特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関
する法律2条2項,同法施行令1条,別表第1の66で第一種指定化学
物質に指定されている。
イ化学物質過敏症について
(ア) 化学物質過敏症をめぐる議論
化学物質過敏症は,昭和25年から35年ころシカゴ大学の小児科教
授であったRandolphが,「環境中の化学物質への適応に失敗し
た結果,個体の新たな過敏の状態の形成」という病態を提言し,その後
昭和62年には,Cullenが,「過去に大量の化学物質に一度暴露
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された後,又は長期間慢性的に化学物質の暴露を受けた後,非常に微量
の化学物質に再接触した際にみられる不快な臨床症状」という概念のも
と,これをMCS(Multiple Chemical Sensi
tivity)と呼ぶことを提唱し,定義付けを行い,その後米国を中
心に,臨床環境医学の臨床環境医と称される研究者により微量化学物質
の影響についての研究が行われてきた。平成11年夏には,米国の研究
者34名の合意文書として「コンセンサス1999」と題する見解が公
表され,MCSについて①慢性疾患である,②再現性を持って現れる症
状を有する,③微量な物質への暴露に反応を示す,④関連性のない多種
類の化学物質に反応を示す,⑤原因物質の除去で改善又は治癒する,⑥
症状が多くの器官・臓器にわたっていると定義された。
MCSとして報告されている症候は多彩であり,粘膜刺激症状(結膜
炎,鼻炎,咽頭炎),皮膚炎,気管支炎,喘息,循環器症状(動悸,不
整脈),消火器症状(胃腸症状),自律神経障害(異常発汗),精神症状
(不眠,不安,うつ状態,記憶困難,集中困難,価値観や認識の変化),
中枢神経障害(痙攣),頭痛,発熱,疲労感があり,これらの症候が同
時にもしくは交互に出現する。そして,暴露が各症状と関連する又は化
学物質過敏症発現の原因ではないかと思われる物質は,ガソリン,灯油,
天然ガス,殺虫剤(特にクロルデンとクロルピリホリス),溶剤,新品
のカーペット,修理剤,接着剤・糊,ガラス繊維,無カーボン複写紙,
柔軟剤,ホルムアルデヒド・グルタルアルデヒド,その他の洗剤等とさ
れている。
(イ) 我が国における化学物質過敏症の知見
我が国では,平成8年度の厚生科学研究「化学物質過敏症に関する研
究」において,「化学物質過敏症とは,最初にある程度の量の化学物質
に暴露されるか,あるいは低濃度の化学物質に長期間反復暴露されて,
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一旦過敏状態になると,その後極めて微量の同系統の化学物質に対して
も過敏症状を来すことをいうが,化学物質との因果関係や発生機序につ
いては未解明な部分が多く,今後の研究の進展が期待される」との見解
が示され,国際的にMCSの名称で呼ばれている症状につき「化学物質
過敏症」との用語が使用されるようになった。
また,平成8年度に厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー研究
班において,化学物質過敏症の診断基準が作成され,他の慢性疾患が除
外されることを前提として,主症状として①持続あるいは反復する頭痛,
②筋肉痛あるいは筋肉の不快感,③持続する倦怠感,疲労感,④関節痛,
副症状として①咽頭痛,②微熱,③下痢・腹痛,便秘,④羞明,一過性
の暗点,⑤集中力・思考力の低下,健忘,⑥興奮,精神不安定,不眠,
⑦皮膚のかゆみ,感覚異常,⑧月経過多などの異常,検査所見として①
副交感神経刺激型の瞳孔異常,②視覚空間周波数特性の明らかな閾値低
下,③眼球運動の典型的な異常,④SPECTによる大脳皮質の明らか
な機能低下,⑤誘発試験の陽性反応であり,主症状2項目と副症状4項
目に該当するか,又は,主症状1項目,副症状6項目,検査所見2項目
に該当する場合と決められた。
そして,厚生労働省は,平成16年2月27日,「室内空気質健康影
響研究会報告書:~シックハウス症候群に関する医学的知見の整理~」
(乙7)を公表し,「化学物質過敏症とは,微量化学物質に反応し,非
アレルギー性の過敏状態の発現により,精神・身体症状を示すとされる
もので,その病態や発生機序について,未解明な部分が多く,診断を受
けた症例には,中毒やアレルギーといった既存の疾病による患者が含ま
れており,研究会では微量化学物質暴露による非アレルギー性の過敏状
態としてのMCSに相当する病態の存在を否定はしないが,化学物質過
敏症という名称のこれまでの使用実態にかんがみると,非アレルギー性
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の過敏状態としてのMCSに相当する病態を示す医学用語として化学物
質過敏症が必ずしも適当であるとは考えられず,今後,既存の疾病概念
で説明可能な病態を除外できるような感度や特異性にすぐれた臨床検査
方法及び診断基準が開発されることが必要である」と報告した。