(ウ) 原告は,平成10年5月に検査科に配属となって以降,毎月数件から数十件の検査を担当していたが,徐々に鼻粘膜や咽頭炎に違和感を感じ,口内炎ができやすくなったと感じるようになった。
原告は,同年6月2日,当時被告病院の衛生管理者であったE医師の診察を受け,E医師に対し,鼻粘膜,咽頭粘膜のヒリヒリ感や咽頭の腫脹を訴えたところ,E医師より,「検査でステリハイドを使用し,それを吸入したことによる刺激症状と考えられるので,一応,耳鼻科受診すること」との診断がされた。
原告は,その後月に1回程度,咽頭痛や倦怠感を訴えて,被告病院での診察を受け,急性上気道炎の治療を受けていた。
なお,原告は,被告病院の検査科に配属される前においては,平成9年3月から4月にかけて,アレルギー性の鼻炎,結膜炎(花粉症)の処方を受け,その後も頸部痛や胃部の症状を訴えていたほか,同年9月に発熱があり,急性上気道炎(風邪症状)の診断を受け,11月には去痰剤の処方を受けたことはあったが,検査科に配属になって以降の諸症状が出たことはなかった。
(エ) 被告病院においては,平成11年1月から,消毒液をステリハイドからサイデックスに変更した。ステリハイドとサイデックスは,いずれもグルタルアルデヒドを含有するグルタラール製剤であり,内視鏡等の殺菌消毒剤として使用されるものであって,製造業者は異なるが,基本的性能に違いはなかった。
ステリハイドからサイデックスに変更するにあたり,1か月間の試用期間があり,原告は,薬剤部に対しサイデックスは臭気が強い旨の申し出をしたが,サイデックスに反対する意見が他に特になかったことから,平成11年1月より変更されることとなった。
サイデックの使用にあたっては,製造業者であるジョンソン・エンド・ジョンソンから使用方法についての説明が消毒を実施する看護師全員に対してされた。
(オ) 原告は,平成11年3月から整形外科に配属となったが,午後は検査科において検査業務にも携わっており,同年9月からは午前は処置室に,午後は検査科に配属となった。