・http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/004/034004_hanrei.pdf
主文
1 被告は,原告に対し,1063万8113円及びこれに対する平成16年6
月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担
とする。
4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
被告は,原告に対し,2488万7347円及びこれに対する平成16年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,被告が設置する病院に勤務していた原告が,検査器具を洗浄する際に使用する消毒液に含まれる化学物質(グルタルアルデヒド)の影響で化学物質過敏症に罹患したとして,被告に対し,雇用契約に基づく安全配慮義務違反を理由として損害賠償(遅延損害金を含む。)を請求している事案である。
争いのない事実等(証拠により認定した事実については各項末尾に証拠を摘示する。)
(1) 当事者等(弁論の全趣旨)
ア 被告は,医療援護等を行うことを目的とする社団法人であり,A病院(以
下「被告病院」という。)を設置している。
イ原告(昭和30年2月5日生)は,看護師の資格を有し,平成6年4月1日,被告にアルバイトとして入社し,被告病院において勤務していたが,
平成7年3月1日から正従業員となり,平成13年6月30日に退職した。
原告は,被告病院に勤務中,整形外科,眼科外来,検査科などに配属され
ていた。
(2) 検査科での勤務内容
原告の検査科における勤務状況は,被告病院1階のレントゲン透視室(以
下「透視室」という。)で実施される被験者の一般状態の観察補助,大腸フ
ァイバースコープ等の検査器具の洗浄消毒等であった。
大腸ファイバースコープ等の内視鏡の殺菌消毒剤としては,グルタルアル
デヒドを含有するグルタラール製剤が使用されており,具体的には,平成1
1年1月以前は丸石製薬株式会社(以下「丸石製薬」という。)製造の2%
ステリハイド(以下「ステリハイド」という。)を,それ以降はジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社(以下「ジョンソン・エンド・ジョンソン」という。)製造のサイデックスプラス28(以下「サイデックス」という。)
を使用していた。
(3) 原告の症状(甲2)
関西医科大学附属病院(以下「関西医大附属病院」という。)のB医師は,
原告が職場での化学物質暴露により不定愁訴を発現し,化学物質過敏症に罹患し,平成16年6月2日に症状が固定したと診断した。
(4) 労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)についての認定(甲
13の1)原告は,平成14年8月6日,大阪西労働基準監督署長により,原告の症状が業務上の災害に基づくものであるとして,療養補償給付の決定を受けた。
runより:グルタルアルデヒドWikipediaより
・グルタルアルデヒドは殺菌消毒薬として利用され、2~20%溶液がグルタラールやステリハイド等の名称で販売されている。
主に医療機器の滅菌、殺菌、消毒に用いられる。
ほとんど全ての細菌、真菌、芽胞、ウイルスに有効である。
作用機序は細胞質のアミノ基の部分をアルキル化することによる。
炭疽菌の芽胞にも有効であり、ホルムアルデヒド、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酢酸とともに WHO(世界保健機関)が炭疽菌の消毒薬として推奨する消毒薬の一つである。
人体へは毒性が強いために使用できない。