「改訂版」宇都宮市教育委員会シックスクールマニュアル-4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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5 シックハウス症候群と化学物質過敏症の違い
シックハウス症候群では,化学物質がある程度高濃度になって症状が出る(したがって濃度を一定の基準値以下に規制すれば発症が防止できる)のに対して,化学物質過敏症では,非常に低濃度でも症状が出てしまう(基準値以下に規制しても発症する可能性がある)とされている。
また,シックハウス症候群では,原因となる住居や建物を離れれば症状は改善,あるいは消失することが多いが,化学物質過敏症は,一定の住居や建物に限らず,いろいろな環境で症状が出てしまう。
はじめがシックハウス症候群で発症し,その後,化学物質過敏症に移行する場合もある。

6 室内汚染の原因となる代表的な化学物質
(1)ホルムアルデヒド
ホルムアルデヒドは,住宅においてしばしば発生する化学物質の一つであり,無色で刺激臭を有し,常温では気体である。

水に良く溶け,約30%の水溶液は通常ホルマリンと称されている。ホルムアルデヒドは,殺菌作用があり,従来から温室や土壌の燻蒸剤等に利用されるほか,標本保存剤,消毒剤,防腐剤として用いられている。
居住環境におけるホルムアルデヒドの発生源としては,建材,家具,家庭用品,喫煙及び暖房器具の使用等が考えられる。

特に,合板・パーティクルボードの接着には尿素-ホルムアルデヒド系接着剤が多用されている。

また,ホルムアルデヒドは壁紙用接着剤の防腐剤としても利用されている。

ホルムアルデヒドの人に対する影響は,主に目,鼻,喉に対する刺激作用で,具体的には,不快感,流涙,くしゃみ,咳,吐き気,呼吸困難等の症状が表れる。厚生労働省は,室内のホルムアルデヒド濃度の指針値として,100ug/m3 (0.08ppm)を設定している。


(2)揮発性有機化合物
揮発性有機化合物は,常温で蒸発(気化)する有機化合物の総称である。
揮発性有機化合物の発生源としては,合板,壁紙等の建材や施工時の接着剤,カーテンやカーペットなどの家具調度品,開放型の暖房器具,殺虫剤,消臭・芳香剤,喫煙等があげられる。
また,室内空気中の揮発性有機化合物の濃度の総和について暫定目標値が400μg/m3 と設定されている。

この数値は,室内空気濃度の状態の目安として利用されることを期待して設定された。国際的には,世界保健機関(WHO)において,約50物質についてのガイドラインが定められている。


材料と発生するVOC の例
材 料 発生するVOC の例


有機溶剤
トルエン,キシレン,ヘプタン,アルコール類,メチルエチルケトン,
酢酸エチル,ブチルエーテル,ブチルアルコール


殺虫剤,防蟻剤
ケロシン,クロルピリホス,アレスリン,ペルメトリン,フェニトロチ
オン,ダイアジノン


防菌・防カビ
チアベンダゾール(TBZ),p-クロロメタキシレノール,イソプロピル
メチルフェノール,ホルムアルデヒド


防ダニ,防虫剤
エムペントリン,ヒノキチオール,フェニトロチオン,フェンチオン,
TBZ,p-ジクロロベンゼン,ナフタレン,アレスリン


芳香・消臭剤 リモネン,α-ピネン,p-ジクロロベンゼン,植物抽出油


清掃剤,ワックスエタノール,デカン,トルエン,キシレン


接着剤
ホルムアルデヒド,トルエン,キシレン,トリメチルベンゼン,ヘキサ
ン,アルコール類,アセトン,メチルエチルケトン


難燃剤 リン酸トリブチル,リン酸トリス(2-クロロエチル)


可塑剤 フタル酸ジブチル,フタル酸ジエチルヘキシル
出典 堀雅宏:ALIA NEWS,37,30-39(1997).花井義道,陳永紅
中西準子:横浜国大環境研紀要,22,1-10(1996)

(3)防蟻剤
防蟻剤とは,イエシロアリやヤマトシロアリ等が木質材料を採食して,木造建築物の強度を低下させ,資産価値を低下させることを防ぐため,土壌や木部に施す薬剤である。
防蟻処理には,床下に種々の製剤形態の殺蟻剤を散布する方法の他に防蟻剤を含んだ種々の材料で土壌を被覆する方法がある。
畳やカーペット等に虫やダニが発生することを防止する目的で薬剤が施されている場合,これらの薬剤はごく微量ずつ空気中に放散する。

また,スプレー式や加熱式の殺虫剤を使用すると室内空気中濃度が急増する。
防蟻剤,殺虫剤,防ダニ剤のほとんどは農薬として用いられるもので,かつては有機塩素系農薬が主体だったが,現在は有機リン系,カルバメート系,ピレスロイド系のものが大部分である。

これらの薬剤には急性毒性,神経毒性,免疫毒性,変異原性・発がん性において注意すべき物質が含まれており,事故事例が報告されている。

クロルピリホス(防蟻剤)の使用は平成15年7月に建築基準法で禁止になっている。