湖南省の作物に浸み込む重金属の中で、最悪のものはカドミウムであり、その高い濃度は臓器の疾患、骨の弱体化、がんなどに関連すると科学者らは言う。
”カドミウムは腎臓と肝臓に蓄積する傾向がある”と、広東省生態環境土壌科学研究所の学者であるチェン・ヌオンチャーンはいう。
”蓄積がある点に達するとその臓器に重大な健康リスクを及ぼす”。
” コメに蓄積するカドミウムは、中国人の食卓だけでなく、モミ殻ヤワラが家畜に与えられるので、動物の肉にも及ぶる。
しかし、食物中のカドミウム汚染のレベルを示す公表されたデータはない。
中国のメディアによるがんの高い発症率を示す村の集団に関する報告が増え、がんと汚染の様々な形態との潜在的な関連についての疑問を提起している。ある科学者らは現在、調査を実施している。
6月に、中国疾病管理汚染センターは、中国中央部のいくつかの省を横断する淮河(訳注:中国で長江・黄河に次ぐ第三の大河)の汚染と、その河の流域に住む人々のがん発症率との間に直接的な関係を引き出したある調査からのいくつかの発見を発表した。
ここ湖南省、特にゴーアさんの村がある衡陽市では、がんの話は普通のことである。
Liujiacunの村の一人の女性は、彼女の夫は肝臓がんで50代後半で死亡したと述べた。”彼は、重労働をしたわけではなく、喫煙したわけでもなく、酒も少々飲むだけであった”と、リという姓だけを名乗った未亡人は述べた。
近くの村々では、作物はしおれているように見え、村の井戸は緑の汚物で詰まっていた。
これらはリさんの子ども時代とは大きな違いであると彼女はいった。
現在、チェンジアワンに20人の人々が住んでいるが、人口は2007年の約100人から減少しており、彼らのほとんどは老人であるとゴーアさんは言い、最近の死亡者の多くはがんによるものであると付け加えた。
これらの疾病と農地を囲む工場との関係を直接結び付けるデータは公開されていない。
しかし、中国のジャーナルに発表された2009年のある調査は、この地域の主要な作物は”重金属の高いリスク”があり、安全である、あるいは良品であるとされるのは半分以下であると報告した。
中国の農民は、”土地に強く結びついている”と、広東省土壌学科学者のチェン氏は述べた。
”中国の戸籍制度は、人々がよその場所に移動することを難しくしているので、ある種の運命論のようなものがあり、途上で待ち受けるどの様なことでも受け入れる”。
やっても無駄だという考えが中部湖南省全体に広がっている。
衡陽市(こうようし)の一部に、隣接する農地を破壊した産業廃棄物の山があり、そのことで立腹した村人のコメントがインターネット上に掲載された。
しかし、近くの工場は地方政府当局と結びついているので、どのような対策も期待していないと村人はインタビューで語った。
”地域保護主義があるので、これらの工場を閉鎖する方法がない”と懲罰を恐れて自分の姓だけ明らかにしたいと望んだ農民のワン氏は述べた。
湖南省当局者にとって、衡陽市周辺の鉱山と工場は、自動車用鉛バッテリー製造のような産業プロセスに重要な非鉄金属の製造における同省の主導的役割を維持する中核である。
”これらの会社に働きかけることは難しい”と環境団体であるグリーン湖南の報道担当スン・チェン氏は述べた。
湖南省当局は、非鉄金属産業を拡大することに熱心である。2015年までの5か年開発計画で当局は、産業による収入を年間18%増大させることを公約しており、総投資額100億ドル以下の80の新規プロジェクトを承認した。
全国的な健康リスクがある中で、北京のある環境担当官は、あるプラントが有毒物質を吸収することによって土壌を浄化するのに役立つことを示した科学者らによる最近の実験をほめた。
未だに土壌汚染の包括的な監視と処理のための国務院の発表した目標への行動の指示がない。
荒廃した土地で働く多くの農民は恐れを抱いたまま宿命論的である。
”あなたはこの地球で生まれた。あなたはこの地球で育った。
そしてあなたはそれについて何もすることができない”と、ニンジンの入ったバケツのそばに座ってゴーアは言った。
”最も脆弱な人々はすでに死んでしまった。私たちは痩せ衰えながら、まだここにいる”。
訳注1
汚染で農地の2.5%が耕作不適―中国・国土資源省 (ウォール・ストリート・ジャーナル 2014年1月1日)