多発性硬化症で神経が傷つけられる仕組みを解明3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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<参考図>



図1 ヘルパーT細胞の1つであるTh17細胞はRGMaを強く発現する
ヘルパーT細胞はその機能によりTh0、Th1、Th17、制御性T細胞(Treg)などの種類に分けることができる。右図はそれぞれのヘルパーT細胞のRGMaの発現量を検討した実験結果である。***は統計的な有意差を意味する。


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図2 RGMa中和抗体が投与されたことで脳脊髄炎の重篤度が改善した
中枢神経で活性化するTh17細胞を移植して脳脊髄炎を引き起こした。縦軸は行動試験によって評価した脳脊髄炎の重篤度、横軸は移植後の日数である。対照抗体はRGMaに結合しない抗体である。**がある日数で統計的に差が見受けられている。



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図3 脳脊髄炎マウスの炎症部にある神経の様子
上図は炎症部の神経繊維(緑)と炎症部(赤)をそれぞれ染色した組織像である。炎症部では神経繊維が著しく損傷を受けている。下図は健康なマウス、対照抗体投与あるいはRGMa中和抗体を投与した脳脊髄炎マウスの炎症部における神経繊維(赤)を染色した像である。RGMa中和抗体の投与により、神経繊維の損傷が抑制されている。



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図4 Th17細胞はRGMaを介して直接神経を傷つける
神経細胞とT細胞を一緒に24時間培養し、死細胞を染色(赤)した。Th17細胞と一緒に培養することで神経細胞死が多く観察されるが、RGMa中和抗体を加えることで神経細胞死が抑制された。Th17細胞の培養液では神経細胞死を起こさなかったことから細胞同士の接触が神経細胞死に必須であることを示唆している。*、***は統計的な有意差を意味する。



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図5 Th17細胞は炎症部で神経と接触し、RGMaを介して神経傷害を引き起こす
病原性を持ったTh17細胞は中枢神経に移行し、炎症を引き起こすとともにRGMaを高発現させて神経に対する傷害性を発揮する。炎症を抑えるのみでなく、RGMaをはじめとした神経傷害シグナルを抑えることが多発性硬化症の神経傷害に対する重要な治療戦略となる。


<用語解説>
注1) 多発性硬化症
免疫システムの異常で脳・脊髄や視神経の各所に炎症が見られる中枢神経系の自己免疫疾患。運動障害、感覚障害、視覚障害などを呈する。症状は再発と寛解を繰り返す特徴がある。

注2) 脳脊髄炎
脳や脊髄に起こる炎症。神経細胞の突起を巻いている髄鞘(ずいしょう)や神経そのものが傷つけられ、脳や脊髄の情報伝達が障害される。

注3) RGMa(Repulsive guidance molecule-a)
神経細胞の突起伸長の阻害、細胞接着、細胞遊走など多彩な機能をもつ細胞膜たんぱく質。免疫応答を制御する機能もある。

注4) 寛解(かんかい)
病気の症状が一時的に回復した状態。

注5) 髄鞘(ずいしょう)
神経細胞の軸索を何重にも取り囲んでいる密な膜構造。中枢神経系ではオリゴデンドロサイトによって形成される。

注6) ヘルパーT細胞
免疫細胞の1種。サイトカインと呼ばれるたんぱく質を放出して他の免疫細胞の機能を補助する。

注7) Th17細胞
インターロイキン17と呼ばれる炎症性サイトカインを放出するヘルパーT細胞の1種。多くの免疫疾患との関与が知られる。

注8) 抗体
特定の物質に結合することができるたんぱく質。結合した物質の機能を阻害できるものを中和抗体と呼ぶ。

注9) 視神経脊髄炎
視神経や脊髄に炎症が生じる疾患。視力障害を呈する。

注10) アルツハイマー病
認知機能の低下や人格変化をきたす代表的な認知症。
<論文タイトル>
“Repulsive guidance molecule-a is involved in Th17 cell-induced neurodegeneration in autoimmune encephalomyelitis”
(自己免疫性脳脊髄炎においてRGMaはTh17細胞が引き起こす神経傷害に関与する)
doi: 10.1016/j.celrep.2014.10.038


runより:少々難しいと思いますが元々こういうブログだったので掲載しました。