○慢性の痛み対策について(概要)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000ro8f-att/2r9852000000roa5.pdf
『今後の慢性の痛み対策について(提言)』より抜粋
1.慢性の痛みに関する現状
・痛みは主観的な体験の表現であるために、客観的な評価が困難であり、標準的な評価法や診断法が未確立であるうえ、診療体制も十分整っていない。
・慢性の痛みは患者の生活の質を著しく低下させ、就労困難を招く等、社会的損失が大きいとされる。
・受療頻度の高い上位5疾病に腰痛症、肩こり症が含まれ、頻度の高い自覚症状の上位には、各部位の痛みが多い(平成19年国民生活基礎調査より)。
2.慢性の痛みの医療を取り巻く課題
(1)痛みを対象とした医療体制
・治療に抵抗性をしめす慢性の痛みの診療に対して、必ずしも適切な治療が選択されているとは言い難い。
・痛みを専門とする診療体制や、そのために必要な制度、人材育成・教育体制も十分
に整備されていない。
(2)痛みに関する正しい情報の提供
・慢性の痛みに関する診断、治療法等の情報が科学的根拠に基いて整理されていない。
・専門医師、一般医師、医療従事者、患者において、痛みやその診療に対する共通した認識がもたれていない。
(3)難治性の痛みへの対策
・難治性の痛みには、様々な疾患による痛みが存在するが、病態が十分に解明されていないために、診断や治療が困難である。
(4)臨床現場における問題点の解消
・諸外国において有効性が確立されているが、国内では適応がないために保険適用されていない薬剤が多いとの指摘がある。
・有効性が乏しいとされる従来通りの鎮痛薬投与などによる治療が、今でも実施されているとの報告がある。
3.今後、必要とされる対策
(1)医療体制の構築
・ガイドラインの作成等による、一般医や専門医の痛みに対する診療レベルの向上。
・関係する診療各科、各職種が連携して治療に当たるチーム医療の形成。
・医療従事者の役割分担や連携方法の明確化と育成。
(2)教育、普及・啓発
・医療者の育成(医師、看護師、介護士等)。
・患者の慢性の痛みの受容。
・患者の周りにいる一般の国民への啓発。
(3)情報提供、相談体制
・痛みに関する情報を科学的根拠に基いて整理し、最新の正確な情報を発信。
・社会全体で痛みに向き合うような働きかけ。
(4)調査・研究
・慢性の痛みの頻度、その種類、現行の対応、治療の有効性等の現状把握。
・痛みの評価法やチーム医療を行ううえで有用となる手法の開発。
・難治性の痛みの病態解明・診断方法の開発。
・新規治療薬や治療法の開発。
・治療ガイドライン等の策定、教育資材の開発。