寺園 淳
アジアにおけるE-waste、すなわち廃電気電子機器のリサイクルが注目されて久しくなっています。
不適正なリサイクルによる環境汚染がよく知られているためであり、世界中からE-wasteが集まる中国の広東省などでの汚染事例が最も有名で、NGOやマスコミによって時々報告されます。
中国では地元の住民や政府による警戒感も強いために国外の研究者による調査は容易ではない一方で、その他のアジア諸国にも同様の状況は存在しながら十分把握されていないことから、私たちはフィリピンやベトナムなどで調査を進めています。
このような問題に対して、私たちは日本からどのような点に気をつけねばならないかを考えます。
まず、日本を含む先進国の責任です。
日本から使用済みの電気電子機器が何らかの形でアジア諸国に輸出されているのは事実です。
これについて、私たちは現状をよく理解した上で、廃棄物処理法やバーゼル法(有害廃棄物の越境移動を規制するバーゼル条約の国内法)など私たちが持っている法律に沿って、輸出国として適切な対応を取らねばなりません。
「何らかの形」というのは、中古品または金属スクラップとしての輸出のことを指しています。
中古品であれば廃棄物ではなく、バーゼル法でも規制されません。
実際にフィリピンなどでも日本の中古品のニーズは高く、適切に輸出入されれば国際的なリユースは環境にもよいことだと考えます。
しかし、修理や再組立ての過程でジャンクショップ(部品や材料としての利用を行うジャンク品を取扱う店舗、零細事業者)との関わりがあって、健康と環境への悪影響を伴う作業や不正な模造品の生産につながることがあるために適切でない場合や、中古品が現地で最終的に廃棄される場合のことも本来は配慮する必要があります。
日本や世界での中古品輸出入基準は強化される方向であり、私たちもその議論に参加しています。
一方、売れなかった中古品が金属スクラップに混ぜられて、中国へ輸出されて材料リサイクルされてしまうこともあります。
金属スクラップの中に有害物質が含まれていたり、年に数回港湾などで火災を発生させたりするなど様々な問題があり、これらの改善策も環境省などとともに検討しています。