・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/
・「浸透性農薬に関するIUCN東京シンポジウム」報告
運営委員 田坂 興亜
IUCN浸透性農薬タスクフォースが2013年6月9日から11日にかけて、表題のようなシンポジウムを開催するにあたり、次のような案内の文書を出している。
「国際自然保護連合(IUCN)は、無脊椎動物(すべての花粉媒介昆虫を含む)に対して先例のない毒性を持ち、極めて残存力の強い浸透性農薬(ネオニコチノイドおよびフィブロニル)の世界的な使用拡大が、生物多様性と生態系サービスに大きな脅威を及ぼすとの懸念から、2011年、種の保存委員会および生態系管理委員会のもとに「浸透性農薬タスクフォース」を設置しました。(途中略)
今回のシンポジウムは、浸透性農薬よるミツバチ被害および水系汚染に関する新所見と、アジアにおける稲作への影響を焦点に議論を深めたいと思います。」
今回は、6月11日に開かれた「アジアの稲作への影響」を扱ったシンポジウムについて、国際稲研究所(International Rice Research Institute 以下「IRRI」という)の研究者であるHeong, KongLuen 博士(以下「ヘオン博士」という)の講演を中心に報告する。
従来、IRRIは、在来種の稲の品種を継続的に
用いて、農薬や化学肥料に依存しない、持続的な農業を推奨してきたNGOからみると、それとはまったく逆の方向で、世界中から稲の品種を集め、これを科学的に品種改良した「多収穫品種」の稲を開発して、化学肥料や農薬と共に普及させるという方針をとってきたため、フィリピンを中心に、多くのNGOが目の敵にしてきた研究機関である。
その中心的な研究者であるヘオン氏が、ここ数年、タイ、中国、ベトナムなど、アジアの稲作地帯に広がってきた稲ウンカの大発生の原因を調べるうちに、「農薬こそがこの問題の元凶である!」という結論に達して、農薬の使用を止めるように、各国政府への働きかけを熱心にするようになった。
さらに、農薬会社に対しても、稲ウンカの大発生をコントロールするのに、農薬の使用は役立たないことを論証して、タイなどでは、一部の農薬の使用を抑制させた。
こうした同氏の活動を映像化したものが、グループ現代によって「ホッパーレース」というタイトルで2013年に完成し、6月11日のシンポジウムでは、田坂が解説を付けて、これをヘオン氏の講演の直後に放映した。
こうした背景の中、ヘオン氏の基調講演は、なかなか迫力のあるもので、「アジアの稲作に対する殺虫剤の影響」というタイトルのもと、アジア全域に広がっている稲ウンカの大発生再発の問題を、稲の品種や殺虫剤使用との因果関係から丁寧に科学的なデータを伴って解説された。