・出展:いのち環境ネットワーク
http://homepage3.nifty.com/vocemf/
・携帯電話基地受信局(BTS)アンテナの近くに住む住民の健康影響:イラン、イスファハンからの報告
ダリウス・サハーバジ-ガーロウエイ、モジタバ・カーバラエ、ハビブ・アラー・モーラジ、ミラド・バーラダラン-ガーファロキー
イラン、イスファハン、イスファハン医療科学大学、医学校、医療物理・医療エンジニアリ
ング学部
要約
背景:近年、携帯電話通信の膨大な使用によって、潜在的な健康危害の懸念が、公衆と科学者たちの間で非常に高まってきた。携帯電話被曝は、免疫機能やホルモン刺激、ほ乳類の脳、精子の運動性
と形態、神経学的病態症候群に多数の影響を持つことが示されてきた。
本研究の目的は、イランのイスファハンにある携帯電話基地受信局(BTS)アンテナの近くに住む人々の心理学的反応と精神生物学的反応を調べることだった。
研究対象と方法:無作為に選ばれた250 人(女性133 人、男性117 人)の住民を対象にした横断研究が、2012 年10 月から2012 年11 月にかけて行われた。
住民は、関連する心理学的・精神生物学的反応の指標に関する標準化された調査票を完了するよう求められた。コンピュータープログラム(SPSS16.0 版、イリノイ州、シカゴ市)は、イェーツ補正でカイ二乗検定を使う統計分析のために使われた。
全てのデータはp=0.05 の判定レベルで検査された。
結果:吐き気、頭痛、めまい、怒りっぽさ、不快感、神経過敏、うつ、睡眠障害、記憶喪失、性欲の低下等の症状のほとんどは、BTS アンテナから離れている住民(>300m)と比べて、BTS アンテナの近くに住む住民(<300mの距離)の間で統計学的に有意である結果がでた。
結論:携帯電話BTS アンテナは、近隣住民の被曝を最小限にするために、人々の集団の300メートル以内に設置されるべきではないことが示唆される。
キーワード
電磁場、健康影響、マイクロ波放射線、携帯電話BTSイントロダクション近年、携帯電話通信の使用が、日常生活でのマイクロ波(MW)放射線からの人体被曝量を猛烈に増やしてきた。携帯電話通信の無い世界を想像できなくなったので、潜在的な健康危機に対する懸念の高まりが、人々の間で非常に増加してきた。そのような電話を使わない人の間でさえも(Repacholi, 2001)。
この点について、世界保健機構(WHO)は、0 から300 ギガヘルツ(GHz)の周波数帯で電磁場(EMF)の健康影響と環境影響を評価するプロジェクトを発足させた(Dasdag 他、2003;Hamblin 他、2006)。携帯電話技術は880MHz と1800MHz の周波数帯を使う(Valberg他、2007)。それに従って、電磁波過敏症(EHS)という用語が、おそらくEMF に関連した症状のために作られた。しかし、その定義と診断は論争中だ(Hansson 他、2006)。
発生するマイクロ波は、ヒトの免疫機能(Repacholi , 2001)や刺激ホルモン(Fattahi-asl 他、2012、2013;Shahbazi-Gahrouei 他、2012)、ほ乳類の脳(de Tommaso 他、209)、精子の運動性と形態(Agarwal 他、2009)、神経学的病態症候群(Leszczynski 他、2002)に、数多くの影響を与えることが示されてきた。
多くの実験で得られた結果によると、ほとんどの人にとって、電磁場強度と症状の間に比例するような生理学的量-反応関係は起こりそうにないようだ(Roosil,2008)。Diem 他は、SAR1.2W/kgの1800MHzRF-EMF被曝によってDNAの一重鎖破壊と二重鎖の破壊が誘発されることを報告した(Diem 他、2005)。
Nittby 他は、SAR12mW/kg の携帯電話被曝で、ラットのアルブミン浸出が増えることを調べた(Nittby 他、2009)。Ammari 他は、ラットの脳で神経膠における慢性的なGSM900MHz 被曝の影響を調べた(Ammari 他、2008)。
一方、Rubin 他は、精神病理学的診断についてEHS 発症者と対照群の間に差を見いださなかった(Rubin,2008)。
Gurisik 他も、実験した状態や分析において、RF 被曝細胞と偽の被曝の間に有意な差を見いださなかった(Gurisik 他、2006)。
Lee 他は、1763MHz 放射線だけではストレス反応が何も起きなかったことを報告した(Lee 他、2006)。
Yuasa 他は、携帯電話から発生した30 分間のパルス波のEMF が、ヒトの体知覚誘発電位に短期的な影響を与えなかったことを調べた(Yuasa 他、2006)。
イスファハンでは、携帯電話基地受信局(BTS)アンテナが、ほぼ何所にでも見られ、とくに住宅、病院、店舗、デイケアセンターの屋上や近くにある。しかし、同じ状況は世界中に存在する。基地局からの被曝は低出力と見なされるとは言っても、その出力は継続的だ(Khurana 他、2009)。
この研究の目的は、携帯電話BTS アンテナの近くに住む人々の心理学的反応と精神生物学的反応を調べることだ。
別の面から言えば、アンテナとの距離やアンテナの近くに住んでいる期間、対象者の性別と年齢の影響等、BTS への住民の被曝状況の影響が目的とされた。
さらに、しばしばEHS と関連する指標、たとえば日常の携帯電話使用、自宅と近くに有る携帯電話基地局との自己評価距離、EMF 健康不安、EHS、心理学的な緊張や精神生物学的ストレスの指標などが、第二の目的だった。