環境有害物質からの小児の保護2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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●鉛の有害性
 私は、過去20年にわたり鉛の影響について調査してきました。

ガソリンの台頭で環境中の鉛濃度は低減してきてはいるものの、それでも産業革命前の先祖に比べればずっと高いレベルで我々はばく露され続けています。

鉛へのばく露量が高いとIQスコアが低くなるということは周知の通りです。ただこれまでは血中の鉛含有量が非常に低ければ、例えば10μg/dL以下であれば問題はないとされてきました。

しかし、私の研究によって、血中鉛濃度が低いレベルでも決して安全と言い切れないことが明るみにされつつあります(Lanphear BP,et al.EnvironHealth Perspect 2005;113)。
 血中鉛濃度とIQスコアの間には閾値は存在せず、わずかなばく露でもIQスコアに悪影響を与えます。

小児での鉛での報告と同じような傾向は受動喫煙によるコチニンばく露やPCBばく露、有機リン系農薬の出生前ばく露でも認められます。

これまで安全とみなされていた低レベルでのばく露であっても楽観視はできません。IQスコアが例えば5ポイント下がることは、一人の子どもだけで考えればさほど深刻とも言えませんが、母集団が大きくなればその影響は無視できないものとなります。

ほんのささやかな低下であっても集団全体を左右することとなるからです。
 また鉛ばく露はそれが何歳の時であろうと認知力に悪影響を及ぼし、しかも人生の初期にばく露した場合、平均よりも早くアルツハイマー型認知症などの症状を呈する可能性が高まるなど、影響が生涯にわたり継続します。
 小児期の鉛ばく露は脳の灰白質にダメージを与えます。

男児のほうが女児よりも2倍ほどダメージに弱いとされています。

1876年~2010年の米国における犯罪率や殺人率のデータから、鉛以外の影響を除いて補正してもなお、鉛ばく露が高いほど犯罪に手を染める人数が増えることが示されました。

環境中鉛濃度の増減から21年シフトして犯罪率も同様の増減を示していますが、それは小児期の鉛ばく露が青年期の行動に影響があることを強く裏付けています(図2)。
 ラットやハムスターへ鉛を投与した実験からも、鉛ばく露で攻撃性が増すデータが支持されています。

脳の灰白質の、他者との関わりを担う部分に鉛が悪影響を与えるためと考えられています。
 こうした鉛ばく露でのダメージに対し薬やワクチンを作って治すことができれば良いのですが、非常に困難です。

何よりもばく露を減らすことが大切であり抜本的な解決策なのです。

過去の遺物のクリーンアップに世間はあまりお金も注意も払いません。

しかし、鉛ばく露を減らすことは1181億~2692億USドルの便益があるという報告もあります(図3)。

鉛管理の総費用に比べ、鉛削減によるプラスの効果ははるかに高いのです。
 昔からある物質に対しては盲目的に安全を信じてしまいがちであり、巷に出回る物質は試験済みだと思いがちだが、それは大きな誤りです。

あのサリドマイドを思い起こせば、ほとんど未知の物質に囲まれて暮らしているようなものだと分かるでしょう。

あたかも動物実験に呈されるモルモットのごとく。
 自閉症は遺伝性であると長年みなされてきました。

しかし出生前にPBDEに暴露された小児のIQスコア(Eskenazi B,et al.EHP 2013;121) や妊娠時尿中B P A濃度が通常の10倍であった小児の3歳児期の行動変化(Braun J,et al.Pediatrics 2011;128)といったデータから、大気汚染ないし環境中の有害物質が、自閉症を含め学習障害や行動障害のリスクを確かに増大させるという主旨の調査報告が続々となされてきている。