・第3 諮問庁の説明の要旨
1 理由説明書
(1)本件異議申立ての経緯
本件異議申立ては,異議申立人である開示請求者が平成22年11月
19日に行った「化学物質に関する個別症例検討会(第5回)議事録(平成20年3月27日),化学物質に関する個別症例検討会(第6回)議事録(平成20年8月19日)及び平成20年12月26日付け事務連絡『化学物質過敏症に係る労災請求事案の業務上外について(回答)』」の開示請求に対し,処分庁が行った原処分を不服として,平成23年1月22日をもって提起されたものである。
(2)諮問庁としての考え方
本件異議申立てに関し,法14条2号及び7号柱書きに該当する情報を含むとして,部分開示とした原処分のうち,別表の2欄に掲げる情報については不開示とするのが妥当であるが,当該情報以外の情報については,不開示情報のいずれにも該当しないので,開示することとして諮問する。
(3)理由
ア 本件対象保有個人情報
本件対象保有個人情報は,異議申立人の労災保険給付の請求(以下
「労災請求」という。)に関し,その業務起因性等について第5回「化学物質に関する個別症例検討会」(以下「検討会」という。)及び第6回「検討会」において議論した議事録等であり,別表の1欄に掲げるとおりである。
イ 不開示情報該当性
本件対象保有個人情報の不開示部分には,異議申立人及び異議申立人以外の請求人の事案について,労災請求に対する業務起因性の判断に係る委員の意見及び事務局の発言が記載されている。
まず,異議申立人以外の請求人の事案(別表の2欄の文書1及び文書2の各①)については,法14条2号の異議申立人以外の特定の個人の権利利益を害するおそれがある不開示情報に該当し,かつ同号ただし書イないしハのいずれにも該当しないため,不開示とすることが妥当である。
次に,異議申立人の事案(別表の2欄の文書1及び文書2の各②)について,当該委員の意見には,症状経過等の事実に言及したと考えられる部分も含まれるものの,そのほとんどが,単なる一般的な事実ではなく,委員が意見の根拠として着目した事実と考えられる部分及び医学的,専門的な見地から症例経過を解釈したと考えられる部分であり,これらは,委員の意見と密接に関連するものであるから,一体として委員の意見として捉えるのが相当である。
また,上記委員の意見及び事務局の発言は,本件労災請求事案における重要かつ機微な医学的判断について,委員及び事務局が率直にやり取りした部分であると認められるが,業務起因性の判断に当たっては,検討会の委員が率直な意見を交換できるよう,議論の中立性が確保されることが必要となる。
本件労災請求事案についての検討会における意思決定は既に終了しているものの,仮に,委員の意見を委員の氏名とともに開示することになれば,検討会による業務起因性の判断結果が,労災請求に係る処分行政庁(労働基準監督署長)の決定において,一定の影響を及ぼすことに鑑みると,当該委員の意見内容に対し,労災請求人からの「意に沿わない」「納得がいかない」などのいわれのない「ひぼう・中傷」の対象となることが懸念される。
意見を述べる委員が「ひぼう・中傷」に対する懸念等から心理的に大きな影響を受けることにより,労災請求者等にとって不利益な発言や率直な発言を控え,労災請求人の傷病等についての直截的な意見が述べられなくなるといった事態が発生し,その結果として,委員等による意思決定の公平性及び中立性が損なわれ,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられることから,法14条7号柱書きの不開示情報とすることが妥当である。
(4)結論
以上のとおり,本件対象保有個人情報のうち,別表の2欄に掲げる情報については,法14条2号及び7号柱書きに該当することから,原処分のとおり,不開示を維持すべきものであるが,当該情報以外の情報については,開示することが妥当である。