・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.html
・ 超微粒子の毒性および炎症作用における活性酸素の関与
The role of free radicals in the toxic and inflammatory effects of four different ultrafine particle types
燃焼装置由来の超微粒子は大気汚染物質の一つであり, この超微粒子が粒子径 10 μm 以下の粒子による健康被害にも関与すると考えられている.
同じ材質であっても, 大きな径の粒子と比較して超微粒子の肺や肺細胞への傷害性は高いが, これは超微粒子が肺胞から細胞間隙へ容易に移行することと関係がある.
また, 質量と比較して大きな表面積をもつために, マクロファージによる除去効率を低下し, 肺胞上皮との反応性を高めるという説がある.
これら超微粒子の吸入は最終的には肺組織におけるサイトカインやケモカインの遊離を引き起こす.
超微粒子の活性酸素産生には, 遷移金属によるフェントン反応を介した活性酸素産生は必ずしも寄与しない. しかしながら, 活性酸素の産生はサイトカインやケモカイン同様により高い毒性を引き起こす.
超微粒子を二酸化チタン (UFTi), ニッケル (UFNi) およびコバルト (UFCo) で作製し, ラットに気管内投与した実験では, UFTi と比較して UFNi および UFCo で高い炎症作用が認められ, 粒子径だけが超微粒子の毒性の重要な因子ではなく, それらの表面の反応性も重要であることが報告されている.
また, UFNi は UFCo と比較して強烈な炎症作用を示すが, その活性酸素産生能には明らかな違いは認められなかった.
粒子や炎症細胞から遊離される活性酸素は細胞 glutathione (GSH) 含量が変化する. 細胞 GSH の変化は NF-κB および粘着分子発現のアップ・レギュレーション, 炎症性メディエータの遊離を引き起こす.
これらの知見から, 超微粒子の毒性には表面積, 化学的組成, 粒子数および表面反応性が関与するものと考えられる.
本報告で著者らは炭素超微粒子 (UFCB, 粒子径 14 nm; 表面積 253.9 m2/g), UFCo (20 nm; 36.9 m2/g), UFNi (20 nm; 36.2 m2/g) およびUFTi (20 nm; 49.8 m2/g) の毒性および炎症作用について in vivo および in vitro の実験系で検討を行った.
これらの超微粒子 125 μg の気管内投与により UFCB および UFCo では4および18時間後に肺胞洗浄液 (BAL) 中への好中球の流入が認められ, マクロファージの炎症性蛋白-2 (MIP-2) およびγ-glutamyl trans-peptidase (GGT) の増加がそれぞれ4および18時間後に認められ, GGT の増加は UFCB および UFCo と同程度だった.
UFNi では投与18時間後に好中球の流入が認められたが, MIP-2 および GGT の増加は認められなかった.
また, UFTi ではいずれの項目にも変化はなかった.
これらの超微粒子の投与4時間後の MIP-2 および投与18時間後の GGT の変化は, プラスミド切断実験により in vitro で測定した活性酸素産生能と一致する変化であった.
UTCo, UTCB および UTNi では炎症マーカーの上昇とスーパーコイル DNA の低下が認められ, 過酸化水素の産生が示唆された.
さらに, UFNi による培養肺胞マクロファージからの TNF-α の産生は抗酸化剤である N-acetylcysteine および glutathione monoethyl ester により抑制された.
これらの結果は慢性閉塞性肺疾患や喘息などの既に酸化的ストレスを受けている患者では, 超微粒子によりそのストレスが増強されることを示唆する.
Dick CAJ, Brown DM, Donaldson K, Stone V
(Napier 大学 健康生命科学部, Edinburg, UK)