・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.html
・大気汚染微粒子は酸化的ストレスを生じる
Oxidative-stress potency of organic extracts of diesel exhaust and urban fine particles in rat heart microvessel endothelial cells
疫学的調査により大気汚染浮遊粒子が心肺疾患および肺癌による死亡率と相関することが示されている.
大気中浮遊粒子は硫黄, 重金属および有機化学物質を含み, これらの物質が心肺疾患を起こし, 気道感受性を増大すると考えられる.
都市の大気中微粒子 (UFP) は気道上皮細胞, 肺上皮細胞およびマクロファージの炎症性サイトカイン産生を引き起こし, 上皮細胞とマクロファージの相互作用によりサイトカイン産生はより増強される.
ディーゼル排気粒子 (DEP) は UFP の主要な構成物質で, 炭素核に脂肪炭化水素, 芳香族炭化水素, キノン類, アルデヒドおよび複素環有機化合物を含んでいる.
DEP および DEP の有機抽出物 (OE-DEP) は肺の炎症, 喘息症状の悪化, 肺癌および心電図の異常を引き起こす.
OE-DEP はマクロファージの熱ショックタンパク生産とアポトーシスを誘導し, 気道上皮細胞のサイトカイン発現および血管内皮細胞の一酸化窒素産生を引き起こす.
また, DEP はスーパーオキシドおよび水酸基ラジカルを産生し, マウス肺の8-ヒドロキシデオキシグアノシン産生および造腫瘍に関係する.
したがって, UFP は DEP 同様に肺で酸化的ストレスを引き起こすかもしれない.
微粒子は肺の深層まで侵入し, 肺胞内に沈着する. このため肺上皮とマクロファージが吸入した微粒子の最初の標的となるが, 肺に沈着した微粒子が何故, 疫学調査で認められる循環器系疾患による死亡率上昇につながるのかは明らかではない.
この関連を説明する幾つかの機序が考えられている. (1) 肺の傷害による肺動脈圧の上昇. (2) 微粒子を沈着した肺から遊離するサイトカインや生理活性物質が心肺機能に影響を与える. (3) 有毒な有機化学物質または重金属が血管内に到達して血管系を傷害する.
著者らは以前に OE-DEP に曝露したラットの肺胞内マクロファージで抗酸化酵素の mRNA レベルが選択的に上昇することを報告している.
また, ラットで, 濃縮大気粒子への短時間吸入曝露により引き起こされた酸化ストレスに対し, スーパーオキシド消去酵素やカタラーゼ等の抗酸化酵素のレベルが上昇することが報告されている.
本報告で著者らは OE-DEP および OE-UFP の細胞毒性および酸化的ストレスの効力をラット心微小血管内皮細胞 (RHMVE) を用いて調べている. OE-DEP および OE-UFP の50%細胞死を引き起こす濃度 (LC50) は 17 および 34 _g/mL で, OE-DEP が OE-UFP よりも強い細胞毒性を有することが明らかとなった.
この細胞毒性は N-アセチル-L-システイン (NAC) の添加により減弱したことから, 酸化的ストレスによるものと推測された. 単層培養 RHMVE に OE-DEP および OE-UFP を加えて6時間後にヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1), チオレドキシンペルオキシダーゼ2, グルタチオン-S-転移酵素P-サブユニット, NADPH 脱水素酵素等の抗酸化酵素の mRNA レベルを測定すると, OE-DEP 添加により用量依存性の上昇が認められた.
また, HO-1 の mRNA レベルは OE-DEP 添加により最も著明に上昇した. これら抗酸化酵素および熱ショックたんぱく72 (HSP-72) の mRNA レベルへの影響は OE-UFP と比較して OE-DEP でより顕著であった.
OE-DEP および OE-UFP による HO-1 および HSP-72 の mRNA レベルの上昇は NAC の添加により低下した.
これらの結果は UFP の有機化学物質分画が酸化的ストレスを介して内皮細胞の機能を変化させ, 心血管系疾患を引き起こす可能性を示すものである.
Hirano S, Furuyama A, Koike E, Kobayashi T
(国立環境研究所, 1 環境健康研究領域, 2 PM2.5およびDEP研究プロジェクト, つくば)
runより:食品・薬品安全性研究ニュースは2002年までしか掲載されてないのですがPM2.5がいかに危険か結構前から言われていた事が分ります。
ブームとなった今こそ徹底した対策を国は考えてほしいですね。