黄砂実態解明調査報告書(平成15~24年度):4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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7.ライダー黄砂・球形消散係数とSPM・PM2.5濃度の関係
7.1.ライダー黄砂消散係数とSPM濃度
ライダーによる観測では、気象台が観測した黄砂日でない日にも黄砂粒子の飛来を示唆するデータが見られることから、ライダー観測での黄砂消散係数とSPM時間値との関係を使って黄砂の飛来を検出する方法について検討した。

黄砂の飛来によって、黄砂消散係数とSPM濃度には、相関関係の存在が予想されることから、毎日の黄砂消散係数1時間平均値とSPM時間値との相関係数、SPM最高濃度、黄砂消散係数最高値などの条件を設定し、抽出した。

その結果、平成20(2008)~平成22(2010)年度の3年間で長崎61日、松江29日、富山26日が抽出され、このうち、当該地域も含めて、全国のどの地点でも黄砂は観測されていない日に抽出されたのは、長崎で33日、松江で15日、富山で13日とおよそ5割を占めていた。

7.2.ライダー球形消散係数とPM2.5濃度
ライダーによって算出される球形消散係数は、大気汚染性のエアロゾルとの関連が深いと思われるため、PM2.5濃度との関係について検討した。

使用したのは、大阪に設置されているライダーデータと国設大阪局のPM2.5、SPMデータである。

平成22(2010)年11月11~15日は、西日本全体を黄砂が覆っていたが、黄砂によるSPMの上昇と、PM2.5の挙動が異なることが球形消散係数との対応でみることができた。

また、大阪で黄砂が観測された平成24(2012)年4月22~25日は、煙霧も多くの地点で観測されており、大阪では黄砂のみの観測にもかかわらず黄砂によるSPMの上昇は少なく、球形消散係数とPM2.5の上昇が顕著であり、むしろ大気汚染によるエアロゾルの影響が大きいと思われた

1.調査目的
近年、北東アジア地域(モンゴル、中国、韓国、日本等)では黄砂現象が頻発しており、その影響等に対する関心が高まっている。

わが国でも黄砂が観測されることが多くなっているが、年々変動が大きく長期的な傾向は明確でない。
黄砂は従来から黄河流域や既存の砂漠等から発生する自然現象としてとらえられてきたが、近年急速に拡大しつつある過放牧や農地転換などによる耕地の拡大も原因とされ、人為的影響により、その規模が拡大している環境問題として再認識されつつある。黄砂は、植物や交通機関に影響を与えるほか、呼吸器疾患等の健康影響の可能性が指摘されているが、飛来した黄砂の物理的、化学的な実態については必ずしも解明されていない。

また、黄砂の飛来と同時に、中国大陸における産業活動に伴う人為的発生源からの影響も懸念される。
環境省では、平成14(2002)年度から、黄砂の飛来実態を科学的に把握するために、黄砂飛来時に国内の複数地点で一斉にエアロゾルを捕集し化学成分の分析を行うなど黄砂実態解明調査を実施してきた。
本報告書は、わが国における黄砂エアロゾルの飛来状況を科学的に把握するとともに、わが国に飛来した黄砂の実態解明に資することを目的として、昨年度の黄砂の状況を整理するとともに、平成15(2003)年度から平成24(2012)年度に飛来してきた黄砂を中心にその状況をまとめたものである。


2.調査方法
2.1.黄砂の飛来状況
平成15(2003)年度から平成24(2012)年度の気象台発表の黄砂日について経年変化、黄砂地点別の飛来回数などを整理した。
また、浮遊粒子状物質(SPM)濃度と黄砂現象の関係を比較検討するために、平成15(2003)年から平成24(2012)年における気象台が発表している黄砂観測日について、都道府県ごとのSPM平均濃度、及び都道府県ごとの同平均濃度に気象台の黄砂観測日数を乗じて算出した各都道府県における黄砂現象を被る概略的な量的指標の推移を示した。

2.2.平成24(2012)年度の成分分析
2.2.1.調査期間と調査地点
平成24(2012)年度における黄砂成分調査は、以下のとおり、黄砂飛来シーズンの2月中旬から6月頃までの間で、日本に黄砂の飛来が予想される日に実施した。
サンプリングは、地方公共団体の協力を得て、全国5地点で行った。
調査地点は、図2-1のとおり、国設新潟巻酸性雨測定所(新潟県;以下、巻と略)、富山県環境科学センター(富山県;以下、富山と略)、国設松江大気環境測定所(島根県;以下、松江と略)、福岡県保健環境研究所(福岡県;以下、太宰府と略)、長崎県環境保健研究センター(長崎県;以下、長崎と略)の計5地点であり、測定地点の緯度、経度、標高を始め、気象条件、周辺の地勢・土地利用状況等を 表2-1に示す。



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採取日:平成24(2012)年4月23~25日
(長崎、富山、巻で煙霧、大宰府で黄砂と煙霧、松江で黄砂を観測)、
平成25(2012)年3月19~21日
(長崎と太宰府で黄砂と煙霧、松江、富山、巻で黄砂を観測)、