・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・米国立環境健康科学研究所ジャーナル
EHP 2010年10月号 リサーチ・アーティクル
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)難燃剤と妊娠中の甲状腺ホルモン
アブストラクト
情報源:Environmental Health Perspectives 118(10) Oct 2010
Research Article
Polybrominated Diphenyl Ether (PBDE) Flame Retardants and Thyroid Hormone during Pregnancy
http://ehp03.niehs.nih.gov/article/fetchArticle.action?articleURI=info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.1001905
Jonathan Chevrier1, Kim G. Harley1, Asa Bradman1, Myriam Gharbi2, Andreas Sjodin3, Brenda Eskenazi1
1 Center for Children’s Environmental Health Research, School of Public Health, University of California?Berkeley, Berkeley, California, USA, 2 Pole d’Epidemiologie et Sante Publique, Institut Pasteur, Paris, France, 3 Division for Laboratory Sciences, National Center for Environmental Health, Centers for Disease Control and Prevention, Atlanta, Georgia, USA
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年10月3日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp/10_10_ehp_PBDE_TH.html
アブストラクト
背景:ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)難燃剤へのヒト曝露は、過去30年間に対数的に増加している。
動物及びヒト研究は、 PBDEs が甲状腺機能を阻害するかもしれないということを示唆している。
母親由来の甲状腺ホルモン(TH)は正常な胎児の脳の発達に重要な役割を果たすが、 PBDEs への曝露と妊娠中の母親の甲状腺ホルモンのレベルとの関連に関するヒトデータは少ない。
目的:我々の目標は、血清中のPBDE濃度が妊娠女性の甲状腺ホルモンレベルと関連があるかどうかを調べることである。
方法:我々は、妊娠約第27週の270人の女性について、10種のPBDE同属種、自由チロキシン(T4)、総チロキシン T4、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定した。
結果:個人の血清中のPBDE同属種の濃度検出の頻度が50%以上((BDEs 28, 47, 99, 100, 153)及びそれらの合計(ΣPBDEs)は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)に逆比例した。
個人の同属種濃度における10倍毎の増加について、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の減少は、10.9% [95% 信頼区間 (CI), -20.6 to 0.0] 及び 18.7% (95% CI, -29.2 to -4.5)の範囲であった。
亜臨床的(無症状)甲状腺機能亢進(低TSHであるが正常T4)のオッズ(確率)もまた、調査参加者のΣPBDEs、及び BDEs 100 と 153の最高四分位数はそれらの第1四分位数に比例して、有意に高かった。
PBDEs と自由及び総チロキシンとの関連は統計的に有意ではなかった。結果は、分布から大きくはずれた値(アウトライナー)を除去した後も大きく変化せず、血中脂質レベルを調整しΣPBDEsを表現するために用いた方法とは独立していた。
結論:結果は、 PBDEs への曝露は妊娠中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の低下と関連することを示唆している。
発見は母親の健康と胎児の発達の影響があるかもしれない。
編集者のまとめ
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)難燃剤へのヒト曝露は、過去30年間で著しく増加している。動物とヒト研究は、 PBDEs は甲状腺機能をかく乱するかもしれないことを示唆している。
母親由来の甲状腺ホルモンは正常な胎児の脳の発達に有用であるが、PBDEsへの曝露と母親の妊娠中の甲状腺ホルモンレベルの関係に関するヒトのデータは少ない。
Chevrier らは (p. 1444)、妊娠約第27週の女性について、10種のPBDE同属種、自由チロキシン(T4)、総チロキシン T4、及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定した。
個人のPBDE同属種、BDEs 28, 47, 99, 100, 153及びそれらの合計の血清中の濃度は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)に逆比例した。
PBDEs と自由及び総チロキシンとの関連は統計的に有意ではなかった。著者らは、PBDEs への曝露は妊娠中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)と関係し、母親の健康と胎児の発達に影響があるかもしれないと結論付けている。