特定外来生物セイヨウオオマルハナバチの防除-3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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 しかし、法規制を受けてから6年以上経った今でも、野外のセイヨウオオマルハナバチは減ることはなく旺盛に飛び回り、彼らの分布域ではやはり在来マルハナバチの姿は減ったままの状態が続いています。

結局、供給源は断たれても、野生化した集団は、北海道の環境に適応し、増え続けていることが判明したのです。

このため、北海道庁もボランティアを募って、2007年から網による捕獲作業を全道的に続けていますが、毎年の捕獲数データには大きな変化はなく、つまり捕獲による抑制効果が低いことが示されています。

セイヨウオオマルハナバチは、一つの巣あたりの新女王や雄の生産量が非常に大きく、もともと種内での巣穴を巡る競争が激しい種なので、現状の捕獲努力では間引き効果しか得られない可能性が高いと考えられました。

 捕獲の効果も上がらず、北海道庁もボランティアの方々もモチベーションが低下しつつあり、このままでは防除事業そのものが立ち消えになってしまう恐れがありました。

そんな状況で迎えたCOP10の年、2010年に、天皇陛下と美智子様が研究所にご訪問され、外来生物研究の説明対応をさせていただいた筆者に、陛下が一言「北海道の外来マルハナバチはどうなっていますか?対策はとれますか?」と聞かれ、思わず筆者は「これから何とかします」とお答えしてしまったのでした・・・

 お答えした以上は、何が何でもセイヨウオオマルハナバチの防除技術を開発する必要がありました。

そこで、「生物多様性プログラム」の研究テーマとして本種の防除手法開発を立ち上げ、検討を進めました。

そして、我々は社会性昆虫という本種の生活史特性を利用した駆除手法を開発しました。

 マルハナバチは1匹の女王が巣内に留まり、働きバチや新しい女王、雄の卵を産みます。

そしてそれらが孵化して生まれた幼虫に、外で花蜜や花粉を集めてきた働きバチたちが餌を与えて世話をします。

そこで、この外で働いている働きバチに特殊な殺虫剤を散布して、巣に持ち帰らせることで、巣内の幼虫たちに殺虫剤を暴露させて、その成長を阻害しようという作戦を考えだしました。

新女王や雄が幼虫のうちに死んでしまえば、もう次の年には巣は作れなくなります。

我々はこの新手法を「ハチの巣コロリ」と名付けました。

 もちろん殺虫剤ですから、他の生物に悪影響がないような化合物および処理方法を考えなくてはなりません。

そこで、まず哺乳類や鳥類、魚類などの動物に無害な薬剤として、昆虫成長制御剤(IGR剤)を選びました。

このタイプの薬剤は昆虫類の外骨殻の成分であるキチン合成を阻害し、脱皮できなくすることで死に至らしめる薬剤で、脱皮しない脊椎動物には無害です。

また成虫には効かないので、効率よくハチの巣に持ち帰らせることができます。

ただし、他のマルハナバチ類にもこの薬剤がかかれば影響を受けてしまうので、セイヨウオオマルハナバチだけ捕獲して散布する必要があります。

そのときに大きな助けになるのが、これまでセイヨウオオマルハナバチの捕獲に携わってきたボランティアの方々です。

彼らは本種を見慣れているので効率よく選択的に本種を捕獲できます。

捕獲と散布の組み合せで、本種の密度を劇的に低下させることができると期待されます。

 現在、当研究室では、この薬剤防除手法の効果と在来種に対する安全性の確認を室内試験および隔離された温室内試験により進めています(図3)。

環境省をはじめ、北海道庁、ボランティア団体の方々からもその成果には注目が集まっているところです。

新しい手法の実践には、十分なリスク評価が必要であり、リスクコントロールが確実に可能と判断されて初めて、野外レベルでの試験に移行する予定です。




図3 温室内での「ハチの巣コロリ」によるセイヨウオオマルハナバチ防除試験

餌資源として花壇を設置した温室内の網室にセイヨウオオマルハナバチと在来種クロマルハナバチの人工巣を設置して飼育する。

網室内で訪花しているセイヨウオオマルハナバチの働きバチだけ一定数捕獲して、薬剤を散布して、また逃がしてやる。

その後1ヶ月間、毎日巣箱から花に飛び回っている働きバチや新しい女王、雄の個体数を種別に数えて、最後は巣箱を解体して巣の成長状況を確認する。

これまでに、この方法でセイヨウオオマルハナバチの巣を弱らせることができること、クロマルハナバチの巣には影響がないことが明らかとなっている。

 外来生物を持ち込むのは人間であり、外来生物自身には何の罪もありません。

しかし、在来の生態系を外来生物から守るためには人間自身が責任をもって外来生物を管理する必要があります。

一旦、定着してしまった外来生物を駆除するには莫大なコストと時間がかかります。

なによりもまず、これ以上外来生物の持込みを増やさないことが肝要であり、我々は防除技術の開発とあわせて、水際対策の検討も開始しています。


(ごか こういち、生物・生態系環境研究センター 主席研究員)


runより:薬剤を極力減らした方法です、こういう事は実現可能なんです。

沖縄ではウリミバエの産卵しないメスを作り大量に放って子孫が残らない様にした事があり絶滅に成功しました。

昆虫も自然の一部なので安易に絶滅させる事は出来ないのですが農薬が要らない位には減らしてもいいんじゃないか?と思います。