環境汚染物質が免疫・アレルギーに及ぼす影響-2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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 ここまで述べてきた、大気汚染の進行やアレルギーの急増という状況を踏まえ、私達は、都市部におけるPM2.5の構成成分の一つであるディーゼル車の排気ガスに含まれる微粒子(Diesel Exhaust Particles;DEP)が、近年におけるアレルギーの増加と関連があるのではないかと考え、DEPがアレルギー性喘息に及ぼす影響について検討することにしました。

実験方法は、まず、マウスの気管内にアレルゲンを反復的に直接投与することにより、ヒトのアレルギー性喘息に近い症状を起こすモデル動物を作製しました。

このモデル動物に、DEPを反復的に気管内投与すると、アレルゲン単独と比べて、肺により多くの炎症細胞が集まり、Th2反応に関わるサイトカインやケモカイン(炎症部位への炎症細胞の移動を促すタンパク)の産生が上昇しました。

また、アレルゲン特異的なIgEやIgG1の抗体産生も顕著に増加していました。

これらの結果から、DEPはアレルゲンによるTh2反応をさらに促進することにより、アレルギー症状を悪化する可能性が考えられました。

 ところで、DEPは単一の成分で構成されている訳ではなく、元素状炭素粒子を核とし、数百~数千とも言われる多環芳香族炭化水素、飽和脂肪酸、硝酸塩、硫酸塩、金属などで構成されている、いわば化学物質の集合体です。

これより、DEP曝露によるアレルギー性喘息の悪化がどの物質に起因するものかを明らかにするため、DEPから有機溶媒で有機化学成分を抽出し、炭素粒子を主体とした残渣粒子成分と分け、それぞれの影響を検討しました。

その結果、残渣粒子成分よりも有機化学成分の方が、アレルギー性喘息モデルにおける気道の炎症やアレルゲン特異的な抗体産生をより増強させることが分かりました。

 そして現在、本プログラムのサブテーマの一つである「環境汚染物質の免疫・アレルギーに及ぼす影響に関する作用機構の解明と評価システムの構築」では、環境汚染物質曝露によるアレルギー疾患への影響評価とその作用メカニズムについて検討を行っています。

私達が生活する環境中には、先に述べたような大気汚染物質だけでなく、室内汚染物質を含め、様々な化学物質が溢れています。

このような物質の中には、それ自体には健康への影響がなくても、アレルギーなどの疾患を有している場合、言い換えれば、化学物質に対する感受性が高いと考えられる場合、症状を悪化させたり、顕在化(発症)させたりする物質が含まれている可能性があります。

これまでに、本サブテーマで得られている成果を一つ紹介します。

対象物質として選択したのは、ベンゾ[a]ピレン(Benzo[a]pyrene; BaP)という物質です。

BaPは、DEP中やタバコの煙に含まれており、発ガン性を有することが報告されていますが、アレルギーに対する影響に関しては未だ不明な点が多い物質です。

アレルギー性喘息モデルマウスに対してBaPを反復的に投与すると、肺における好酸球などの炎症細胞やサイトカインやケモカインの産生が顕著に増加しました(図3)。

また、アレルゲン特異的IgG1抗体の産生も上昇することが分かりました。

加えて、所属リンパ節中の細胞増殖や、抗原提示細胞の活性化の促進も認められました。


以上の結果から、BaPは免疫担当細胞の活性化などを促進し、Th2反応をより過剰な状態にすることにより、アレルギー性喘息を悪化させる可能性が考えられました。

現在、私たちが日常的に曝露される可能性の高い他の環境汚染物質についても、さらに検討を進めています。