図3 BaP曝露によるアレルギー性喘息への影響
(A)-(C)は肺の病理組織です。
Vehicle(対照)群(A)では炎症細胞は認められません。
アレルゲン(OVA)を気管内投与したアレルギー性喘息モデルマウスの肺では、気管支や血管の周囲に炎症細胞が集まっています。
((B)の図。赤い点線に囲まれた部分の紫色の小さな点が炎症細胞)。さらに、アレルギー性喘息モデルマウスにBaP を投与した(C) では、(B)より多くの炎症細胞が観察され、OVAによって起きた肺の炎症がさらに悪化していることが分かります((C) はOVA+BaP 20 (pmol/動物/週)の群)) 。
(D)は、肺胞の中に集まってきた好酸球の細胞数の結果です。OVAのみの群と比べて、OVA+BaP 20 の群で顕著に増加したことを表しています。
**; P<0.01, vs. Vehicle(対照)群, #; P<0.05, vs. OVAのみの群
これまでは、小児から成人への環境汚染物質曝露による免疫・アレルギーへの影響を主に検討してきましたが、環境の変化に対して感受性が高いのはアレルギーのような疾患を有している方だけではありません。
胎児、あるいは乳幼児も、環境の変化に非常に影響を受けやすい集団の一つと言えます。
環境健康研究センターでは、2010年より開始された「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)のコアセンターが設置され、環境要因(環境汚染物質の摂取など)が子どもの成長・発達に与える影響を明らかにするための大規模な疫学調査が行われています。
これを踏まえ、実験的研究からも、発達期(胎児期、乳児期、小児期)における環境汚染物質の曝露が免疫・アレルギーに及ぼす影響を明らかにし、その作用メカニズムを解明することにより、疫学的研究に実験的な科学的根拠を与え得るデータの蓄積に努めていきたいと考えています。
(やなぎさわ りえ、環境健康研究センター生体影響研究室 主任研究員)