家庭用品中の難燃剤の有害性、効果、規制に関する国際的議論 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html

・ピコ通信/第165号

発行日 2012年5月18日
発行 化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/sick_school_master.html
家庭用品中の難燃剤の有害性、効果、規制に関する国際的議論


■はじめに

 家具や電子機器のケースなどに含まれる難燃剤は、使用時や、廃棄時の解体、焼却、投棄などで、人曝露や環境放出が生じると言われています。

これらの難燃剤は残留性、生物蓄積性、生殖毒性、神経発達毒性、免疫毒性、内分泌かく乱性など、様々な有害特性を持つことが報告されており、人の健康と環境への影響が懸念されています。

 2009年に米テキサス州サンアントニオで開催されたダイオキシン世界会議の参加者の多くが臭素系及び塩素系難燃剤についての懸念を表明するサンアントニオ宣言に署名しました。
 一部の臭素系難燃剤の使用は、自主的に又は規制により制限されていますが、規制されていない多くの難燃剤があります。
 最近のアメリカの研究では、布張り家具の発泡体に難燃処理をしたものと、しないものを火災テストで比較すると、耐燃性はほとんど変わらず、一方、難燃剤を使用しない耐燃布バリアを使用したものに効果があることが示され、難燃剤の代替として期待されます。
 難燃剤メーカに後押しされて、テレビの筺体に現実離れしたロウソク裸火耐燃要求を電子機器の安全性に関する国際規格に織り込もうとする動きがあります。
 本稿では、これらのトピックスについて、簡単に紹介します。
 なお、日本における難燃剤の状況についてはピコ通信第118号(2008年6月号)の調べてみよう家庭用品(16)難燃剤をご覧いただき、本稿では難燃剤使用の表示の問題に少し触れます。


1. 難燃剤の有害性を示す研究の例

▼臭素系難燃剤PBDEに曝露したメダカは、この化学物質だけでなく、関連する毒性影響(甲状腺ホルモンかく乱)も子孫に伝える(2011)。
▼胎内の化学物質 PBDEとPCBは成獣ラットの聴力喪失に関係する(2011)。
▼PBDEへの妊婦の曝露は甲状腺刺激ホルモン(TSH)の低下と関連する(2011)。
▼難燃剤ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)に汚染されたダストへの暴露は、ヒトの血中濃度と強く関連する(2009)。
▼室内ダスト中の難燃剤PBDEの濃度が高い家に住む男性は、低い家に住む男性に比べてテストステロン(男性ホルモンの一種)レベルが低い(2009)。
▼難燃剤デカBDEに生後直ぐに低用量で曝露したマウスは多動症状を示す(2008)。
▼難燃剤PBDEはラットの性的発達に影響を及ぼす内分泌かく乱作用を持つ(2006)。


2. 難燃剤の曝露経路を示す研究の例

▼アフリカの電子廃棄物:プラスチックケース中の臭素系難燃剤の焼却によりダイオキシンの放出と、母乳中の臭素系難燃剤のレベルが増大している(2012)。
▼米国や途上国で売られているカーペットは、特に幼児や小児に神経系のダメージを起こす難燃剤を含んでいる(2011)。
▼発泡体をリサイクルする人やカーペットを敷く人は、体内にこれらの化学物質を他の人より10倍多く持っている(2011)。
▼中国の電子廃棄物解体現場の近くに住む妊婦は解体現場から離れた所に住む妊婦に比べて残留性有機汚染物質への曝露が高く、甲状腺ホルモンのレベルが低い(2010)。
▼難燃剤 HBCD の主要な暴露経路は食物ではなくダストである(2009)。
▼PBDEの分解物質が廃棄物を通じて米国中の水系に遍在している(2009)。
▼古い乗用車は難燃剤の暴露源(2008)。
▼幼児の体内の難燃剤レベルは母親より3倍高い(2008)。
▼EUでは禁止され、米国では2004年に中止されたペンタBDEの代替難燃剤が家庭や屋外環境で検出されている(2008)。
▼パイロット、乗務員、清掃クルー、乗客は、かなりの量の臭素系難燃剤を体内に取り込んでいるかもしれない(2007)。
▼アメリカの一般国民の食物からの難燃剤摂取量及び室内ダストから摂取量は十分に調査されていない(2006)。


3. 臭素系及び塩素系難燃剤に関するサンアントニオ宣言

 2010年9月に米テキサス州サンアントニオでダイオキシン世界会議が開催され、会議の参加者の多くが臭素系及び塩素系難燃剤についての懸念を表明し、22カ国からの150人近くの科学者らが下記の声明に署名しました。この中には日本からの科学者も含まれています。