神戸大学の星教授はウズラを使用し、クロチアニジンを含む農薬ダントツを与えて実験した。
近年、オスのラットでの動物実験では、ネオニコチノイドにより生殖異常があると報告されているが、ウズラで行ったこの実験でも、精巣では精上皮中の空胞数、生殖細胞のDNAの断片化が有意に増加、卵巣では胚の重量がわずかに減少、産卵数は有意に減少した。
以上から、クロチアニジンは鳥類の繁殖能力に影響することが示唆されるという結果になった。
この結論を得て、佐渡市ではトキ野生復帰のため、2012年から島内でネオニコチノイド系農薬の使用をやめた。
また、この年からトキの野生状態での繁殖が始まっている。
この発表に関連して、石川県県民運動本部が1970年頃から、県内の小学校の協力を得て行っている全県的なツバメの生息調査を注目してみた。
ツバメの数は1985年くらいから減少し、その頃、35,000羽ほど見られたものが、2012年には10,000羽まで減少した。
しかし、ツバメの巣の数は2004年頃までは15,000巣程度で一定なのだ。
巣の数が減らないのにツバメの個体数が減ったのは、巣立つヒナの数が減ったのか、巣立っても長距離の渡りが出来ないからなのだろうか?
石川県立大学の上田教授は近年、各地で指摘されるトンボのアキアカネの減少とその原因について、2006年から5年間にわたって調べた結果を発表した。
それによると、アキアカネの減少には2つの傾向がある事が分かった。圃場整備などによると思われる長期的で緩やかな減少と、それとは別に短期的で急激な減少である。
実験室やミニ水田での研究の結果、プロフィニルとその代謝生産物は直接的な毒性で、羽化が全く見られないほど壊滅的に影響した。
イミダクロプリドでは、直接的な影響に加えて餌動物を減少させることで、間接的にもアキアカネの幼虫に影響を与え、羽化率が農薬を使わない時の30%程度まで低下することが分かった。
これらの生存低下を組み込んだシュミレーションなどの結果、西日本では1990年代後半にイミダクロプリドにより、東日本では2000年前後にフィプロニルによって著しい減少があったと推定された。
最近、これらの農薬使用量は減少し、ジノテフランをはじめとする新しいネオニコチノイド系農薬に変わりつつある。
ジノテフランに関しては、イミダクロプリド以上の影響があるようだと分かっているものの、それ以外のネオニコチノイド系農薬の影響については、今後の研究課題である。
環境脳神経科学情報センターの黒田洋一郎代表の発表は予定の15分を大幅に超えて行われたが、ミツバチの大量死の原因がネオニコチノイド系農薬であること、その農薬はミツバチだけでなく人間の脳にも多大な影響を与えることを分かりやすく説明したものであった。
ミツバチのコロニー数が減少し始めるのは1990年の半ばからであるが、2009年にはミツバチの群の崩壊として社会問題になった。
2012年4月にはアメリカの有名な科学雑誌『サイエンス』に掲載された二つの論文により、ミツバチ大量死の原因はネオニコチノイドの散布が主な原因と考えられるようになった。
さらに同年10月、英国の科学雑誌「ネイチャー」にはミツバチに近い社会性のハチがネオニコチノイドやピレスロイド系農薬に暴露されると巣に帰れなくなりコロニーが崩壊することが報じられ、大量死はネオニコチノイドが原因であると実験的にも確認された。
日本でも滋賀大学の松本氏により、水田のカメムシ防除のために散布するネオニコチノイドが、周辺のミツバチ大量死の原因であることを明らかになった。
有機リン系農薬は神経伝達物質のアセチルコリンの働きを狂わせるため、有機リン系農薬をあびた母親からはADHD(注意欠陥多動性障害児童)や知的障害の子どもが多く生まれたという医学論文が、最近アメリカでいくつも発表された。
アセチルコリン情報系は、人間の脳の記憶など高次機能の発達に重要な役割を果たしている。
ネオニコチノイドは、そのアセチルコリン情報系もかく乱し、神経回路(シナプス)の形成を阻害するため、発達障害の原因になる可能性が高いと黒田代表は警告を発した。