鳥もいない、虫もいない。-4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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第2部は民間稲作研究所の稲葉代表の発表から始まった。
 1970年代、日本や韓国では高度経済成長による労働力不足、つらい畑仕事からの解放ということで田植え機による稲作が急速に普及した。

時代の要請であったが、極端な密植により収穫量を上げようとし、化学肥料で養分を補給、除草は除草剤、病害虫は殺菌・殺虫剤で対応しようとした。これによって日韓は世界でも最高の農薬使用国になり、同時に病害虫の多発をも招くこととなった。
 一方、除草剤による「胆のうガン」の多発が指摘され、ようやく環境保全型の農業にすべきであると提言されるようにもなった。

しかし、その方法が農薬散布の回数だけを問題にしたため、農薬会社は散布回数を減らしても効果が持続する神経毒性の長期残留農薬・ネオニコチノイド系農薬やフィプロニルを開発したのである。
 これらの農薬は種子処理だけで長期間効果があり、人間には優しく問題が無いという触れ込みで農業のみならず一般家庭、学校などにも広く普及している。
 民間稲作研究所では、除草剤を含めた農薬を一切使わない農業を目指している。収量、味、栄養価、コスト、労力などの面で慣行栽培を超える栽培技術の確立を目指している。
 例を挙げるならば、種子を60℃のお湯に7分間漬け、その後、ただちに冷水に漬けるだけで10種類の病害と芯枯線虫を除去できる。

また、2回の代かきの後で雑草を除去、田植えをしたら7cm以上の水位を確保して、発酵肥料、米ぬか、くず大豆をいれることで雑草は生えなくなる。
 無農薬・有機栽培によって、水田はイネを作る場所であると同時に、水田の持つ多面的機能を飛躍的に高めることが出来る。ユスリカが増えて蚊柱を作るため、ツバメがたくさんやって来る。2、3年するとドジョウも大量に繁殖するようになる。

ヤゴが生まれ、トンボの一斉羽化も見ることが出来るようになる。ヨーロッパの国々や韓国などでは、農法転換の助成を積極的に行ったりしている。

日本でもようやく環境省が水田を湿地環境と位置づけ、環境保全型稲作にエールを送るようになってきた。
 これらの動きを促進させるためにも、過剰な斑点米の審査基準を見直し、農家が不必要に農薬散布をしなくても済む状態を作ることも重要である。 「JAみどりの」の佐々木理事は、宮城県大崎市田尻地区で30年来取り組んでいる環境保全型農業の報告であった。
 生産者だけが考えるのではなく、地域の消費者(生協)、流通業者、大学、NPOや行政が「田尻地域田んぼの生きもの調査プロジェクト」を結成、みんながかかわって定期的な調査を行っている。

そして、その結果から「たじり田んぼの生きもの宣言」を行い、生物多様性の豊かな水田で生産していることを明らかにしている。

米袋に「生きものマーク」を表示して販売している生協もある。
 JAみどりのでは、特殊な生物の再生を目指すのではなく、すべての耕地ですべての生産者が環境の取り組みを進め、童謡や民話に語られるドジョウ、メダカ、トンボがあたりまえのように見られる環境を再生持続させようと努力をしている。
 そのため、有機稲作を推進し、2012年からはネオニコチノイド農薬の取り扱いを中止して他の農薬に切り替えている。
 よつ葉生活協同組合の冨居理事長は消費者の立場から報告した。

よつ葉生協は栃木のほぼ全域をカバーする生協である。

1982年発足。

組合員は27,000人。
 2009年頃から無農薬のものを扱うべきという話はあったが、危険性の把握も十分でなく代替え品も見つからずで結論は出なかった。

しかし、2011年3月の大震災と原発事故で、水産物は入荷ストップ、地産地消で進めてきた農作物も地元のホウレンソウなどがヨウ素・セシウムでストップ。

よつ葉生協の有り方を根本から考えざるを得ない状況となった。
 命と健康についてこれ以上ない危機に直面し、放射能と農薬のダブルパンチでは体が持たない。

放射能問題から得たせめてもの教訓は、一日も早く農薬を不使用にすることにより健康被害を少なくする願いであった。

生協では各農家と話し合い、農薬を使わずに有機農法で生産するようにお願いをしている。

果樹、野菜の有機栽培は困難だと言われているが、これも農家との話し合いで順次具体化を目指している。

2012年3月に、ネオニコチノイド排除をようやく米から開始した。
 第3部は、ラムサール・ネットワーク日本の金井裕氏が進行役となり、講演者が車座になり討論の予定であった。

しかし時間の関係で一人ずつ感想を述べ、また、佐賀大学から駆けつけたという学生さんの質問に答えるなどしてシンポジウムを終了した。
 シンポジウム後の懇親会は関係者だけの反省会の予定であったが、50名近い方の参加があり、情報交換の場として素晴らしいものになった。

この盛り上がりを次の具体的な行動に結び付けることが出来ればと思う。個人的には有機農業の方々と知り合い、その可能性を知ったことが大きな収穫であった。

最後になるが、会場を無償で使用させて下さった立教大学に感謝したい。