・出典:慢性疲労症候群(CFS)入門
http://spinozafj.web.fc2.com/mangcfs.html
・第9章 ペーシング戦略
前章で、あなたは、自身を「評定尺度」の上に置き、概説した技術を使って自分の制限を見付けました。
次のステップは自分の制限に適応することです。これはふつう、何年もの期間を要し、多数の戦略を使う緩やかなプロセス(過程)です。
以下に、考慮すべき10の戦略があります。
試行を繰り返し、あなたに有効な組み合わせを見付けてください。
活動レベルを下げる
制限に適応するための主要な戦略は、全体的な活動レベルを下げることです。
これは2段階のプロセスとみなすことができます。
第1段階で、自分はどれくらい活動を削らねばならないかを決定します。
例えば、あなたがふだん1週間に行う活動をリストにして、それぞれの活動に要する時間を見積もります。
その次に、その時間を合計して、合計したものを「評定尺度」あるいは前章のエンベロープの演習を使って設定した制限と比較します。
リストの項目が、あなたの制限よりさらに時間を要するならば(例えば、1日6時間活動したいが、あなたの体が4時間しか許さない場合)、エネルギーエンベロープの中にとどまるために項目を調整する必要があるでしょう。
第2段階で、「人に任せる」「簡単にする」「取り除く」を組み合わせて、活動レベルを下げます。
「人に任せる」とは、かつてあなたがしていた作業をしてくれる誰かを見付けることです。
例えば、家族に食事の支度あるいは食料品の買い物を分担してもらうのもよいですし、清掃サービスに家の掃除を引き継いでもらうこともできます。
頼みの綱として、家族と友人、雇い人、あるいは宗教団体・社会奉仕クラブなどの地域社会の情報源を使う手があります。
「簡単にする」とは、作業をやり続けるけれども、もう入念に、あるいは完璧にやらないことです。
例えば、あなたは頻繁に家を掃除しなくても、あるいは手の込んだ料理を作らなくてもよいのです。
最後に、あなたは幾つかの活動あるいは人間関係を「取り除く」と決めるかもしれません。
例えば、ボランティアの仕事から身を引いたり、幾つかの友達づきあいを保留したりできます。
休息を予定する
毎日計画的に休息を取れば、症状が緩和され、安定を得て、休息時間の合計を減らすことができます。
重い症状から回復する手段として取る休息(「回復休息」)とは対照的に、計画的な休息、つまり「先手の休息」は、ぶり返しを予防し、プッシュ・アンド・クラッシュの繰り返しから脱出する戦略です。
先手の休息は、毎日のスケジュールに休息の時間を組み入れます。
休息の長さ、休息の回数、休息の方法は人によって大きく異なります。
多くの人々は15分から30分の休息を1、2回取ります。重度のCFSやFMの人々は、1日に多くの短い休息、例えば、1 、2時間おきに10分から15分の休息を取れば有効かもしれません。
あなたの気分に関係なく、休息を日課の一部として取り入れて一貫性を保つならば、あなたは最大の恩恵を得るでしょう。
気分が良いとき、つい休息を省きたくなるはずです。
そのようなとき、先手の休息を取ることで、症状が悪化すること、さらに多くの休息が必要になることを避けているのだ、と自分自身に言い聞かせると役立つかもしれません。
単に具合が悪いときや疲れているときだけでなく常に計画に従って休息することは、症状に応じた生活から、計画された生活に移行するのに不可欠です。
多くの人々は、静かな場所で目を閉じて横になれば、休息が最も効果的であると思います。
しかし、音楽を聴くか、あるいは安楽椅子で休む人々もいます。
先手の休息を使いはじめると、あなたは、自分の考えごとが休息のじゃまをすると分かるかもしれません。
そのようなときは、リラクセーション法を用いてみる、CDを聴いてみる、あるいは本を読んでみます。自分の考えごと以外の何かに注意を集中させれば、気持ちがリラックスして、休息しやすくなるでしょう。
目を閉じて横になる休息は、我々のプログラムの人々に最も人気がある戦略です。活動が正常でも、それををやめて休憩することと、静かな場所を作ることが重要です。
我々のプログラムの一人の女性が、我々のコースを取ったあとに休息の経験について言いました。
「テレビを観る、電話で話す、あるいは家族と話す……これらは横になりながらでも、実際にはかなり疲れることを知りました。目を閉じた休息は全く違っていて、それは非常に有効だと分かりました。このコースを取る前、私は自分が休息していると『思い込んでいた』だけでした。今、私にとって休息は(テレビや電話なしで)目を閉じて横になることを意味します」
先手の休息は人気が高いエネルギー管理戦略です。
なぜなら、簡単で分かりやすく、すぐに効果が得られるからです。
いっそうの安定、症状の軽減、より大きなスタミナが得られます。
我々の自助コースを取っている一人の女性が、彼女のグループに言いました。
「私は計画的な休息を1日2回取り入れることに決めました。結果は信じられないほど素晴らしかったです。私の症状と疼痛は軽減され、私は、もっと『思いのままになる』と感じます。睡眠の質はさらに良くなり、気分さえ改善しました」。もう一人は「私は、活動の合間に5分だけ休息しました。具合が悪かった4年半で初めて、症状を管理することと、ある程度予想どおりの生活をすることが可能だという気がします」と言いました。
上記のように、一部の人々は1日に1、2回の休息を取るよりも、数回の先手の休息を取る方が役立ちます。これを実際に試してみた一人の女性がいます。
彼女は、ほとんどどのような労作でも疲れてしまう重度のCFSでした。
バッテリーがとても速く上がってしまい、頻繁な充電が必要でした。
彼女は短い休息時間を頻繁に使うことで、休息の合計時間を劇的に減らすことができました。
我々のコースを取る前、彼女は3時間の昼寝を2回して、1日に6時間休んでいました。
先手の休息について学んだあと、彼女は1日を1時間と2時間のブロックに分割し、各ブロックの間に10分から15分の休息を取ることにしました。
2カ月の間に、彼女は休息の合計時間を1時間半減らしました。
6カ月後、彼女は休息時間を1日3時間へと減らしました。小さなブロックで休息することで、彼女は症状を悪化させることなく、活動時間を3時間増やしました。
この戦略があなたの役に立たなければ、休息を別の方法で試みてください。
休息している間に寝入ってしまうならば、それは体がもっと多くの休息を必要としている証拠かもしれません。
睡眠ログ(記録)をつけることで、体が必要とする休息を決定できます。