・出典：慢性疲労症候群(CFS)入門
http://spinozafj.web.fc2.com/mangcfs.html
・第5章 疼痛のための戦略
疼痛はふつう、線維筋痛症の中枢症状であり、しばしばCFS患者でも問題となります。
FMの人々の疼痛は、だいたい、全身の至るところで感じられますが、一つの部位から始まって広がるか、あるいは一つの範囲から始まって別の範囲に移動します。
手、腕、足、脚、あるいは顔に、ヒリヒリ感・チクチク感、あるいは麻痺などの神経学的問題を伴うことがあります。
CFSの人々の疼痛は、関節痛、あるいはもっと広範に、全身疼痛（「トラックにひかれたような感じ」）があるかもしれません。
CFSとFMの疼痛にはさまざまな原因があるので、ふつう、さまざまな戦略を使って管理します。あなたが疼痛の問題を抱えているならば、以下の選択肢から疼痛管理プランを作ることができます。
薬
FMとCFSの人々は、しばしば薬で疼痛を治療します。
どの薬も一貫した効果がないため、また、体が鎮痛薬に慣れるにつれて、時々薬の効き目がなくなるため、ふつうは試行が必要になります。
通常患者は、標準の投与量レベルのごくわずかな用量から始めます。
薬の鎮痛作用を期待するFMとCFSの患者は、ふつう、アスピリンや市販の鎮痛薬など、処方箋なしで買える製品から始めます。
他の人たちは Ultram（Tramadol）、場合によっては、麻酔薬などの処方薬が助けになります。
睡眠を改善する処方薬も疼痛に薬効があることがあります。
また、Elavil（Amitriptyline）、プロザック、そしてパキシルといった抗鬱薬がしばしば試みられます。
FDA（食品と医薬品を監理する米国の行政組織）は線維筋痛症の治療に三つの薬を認可しています。
Lyrics（pregabalin）、Cymbalta（duloxetine hydrochloride）、そして Savella（milnacipran HCl）です。
また、多くの線維筋痛症患者は、しばしば首あるいは肩に、発痛点（筋肉あるいは筋膜の特定部位）の周囲に局在する疼痛疾患、筋筋膜性疼痛症候群（MPS）があります。
MPS は、投薬と、発痛点の局所麻酔薬の注射で治療できるかもしれません。
一部の患者は神経因性疼痛あるいは神経痛があり、通常、手と足に灼熱感、あるいは電気ショックのような感覚があります。
このタイプの痛みはしばしば、Neurontin などの抗痙攣薬で治療されます。
運動、姿勢と動作
運動はFMに最も広く指示される治療法の一つで、CFSにも役立ちます。
定期的に運動プログラムを実行すれば、硬直を和らげ、運動不足に陥るのを防ぎ、気分を良くすることができます。
軽いストレッチ運動のプログラムは、FMとCFSの両方に効果があります。
さらに、ストレッチ運動に多くの休憩を取り入れれば、FMの人々が硬直を和らげるのを助けます。
FM患者は、特に、どのように体の姿勢を保つか、どのように体を動かすかを試すことによって、疼痛を軽減できます。
多くの患者が、長時間同じ姿勢でいると、硬直が増え、疼痛が強まると分かります。
このため、周期的に体を動かせば、疼痛を避けることができます。
また、野菜を切り刻むなどの、反復動作をする時間を制限すれば、疼痛を避けることができます。
運動、体の動かし方の詳細については第16章を見てください。
ペーシング
疼痛をよく引き起こす原因は、やりすぎ、あるいはその人の制限を超えた活動レベルです。
ペーシングを取り入れれば、生活が安定し、疾患をコントロールする方法が得られます。
ペーシングは、例えば、下記のようなさまざまな戦略が必要になることがあります。
•全体的に活動レベルを下げる
•作業に優先順位をつける。人に任せる
•計画的に休息を取る
•活動時間を短くする
•集中力のいる作業と集中力のいらない作業を切り替える
•最も負担の大きい活動を、1日の最も良い時間帯に行う
•精神的・社会的な限界を知る
•活動と症状との関係を見るために記録をつける
ペーシング戦略の詳細については第9章を見てください。
リラクセーション
疼痛があると、筋肉の緊張を引き起こすとともに、不安を生み出します。
そして、この両方がさらに疼痛を強めることがあります。
筋肉の緊張が直接的に疼痛を強めるのに対し、不安は、ストレスを増やし、無力感を増大させることで、間接的に疼痛を強めます。
筋肉の緊張とストレスの両方を解決する手段は、リラクセーションです。
また、リラクセーションは、疼痛から気を紛らすのにも役立ちます。
一部の人々は、“The Patient's Guide to CFS and FM” （「患者のためのCFS・FMガイド」）の第13章に記述したような、正式なリラクセーション法あるいは瞑想法を定期的に実行する必要があります。
リラックスさせてくれる他の活動として、運動、深呼吸、入浴とジャグジー、マッサージ、休憩時間、テープを聴くなどがあります。
心配とフラストレーション、憂鬱に対処する
疼痛は、心配、フラストレーション、そして憂鬱のような感情によって強まります。
心配とフラストレーションは筋肉の緊張を引き起こし、疼痛をいっそう強めます。
リラクセーション法は、直接的に筋肉の緊張を和らげ、そして間接的にもストレスを軽減するので、疼痛を軽減することができます。
人は憂鬱になると皆、わずかな痛みにも弱くなります。
薬をたまに使う自助戦略を立てれば、憂鬱を管理することができます。.感情の詳細については第19章を見てください。
疲労と睡眠不足を治療する
疼痛、疲労、睡眠不足は緊密に結びついています。
疲労は疼痛感を深めます。我々は疲れていると、疼痛をより強烈に感じます。
そのため、疲労を軽減することで疼痛感が小さくなります。
同様に、睡眠不足も疼痛を強めるので、睡眠を改善すれば疼痛をコントロールできます。
この三つの症状の中では、たいてい、睡眠不足が一番先に治療されます。
温熱、寒冷、マッサージ
温熱、寒冷、そしてマッサージが一時的な疼痛緩和に使われることがあります。
温熱は、筋肉の緊張や運動しないことが原因で起こる疼痛を軽減すために最もよく利用されます。温かさは血流を増やし、疼痛を軽減して、硬直を和らげてくれるので、その結果、いくらかのリラックスを生みます。
限局性の痛みに対しては、懐炉あるいは温パックが多く使われます。
全体的な痛みの軽減に対しては、しばしば温水浴槽を使ったり、ジャグジーへつかったり、あるいは電気マットレスパッドの上に横たわります。
冷却療法は、炎症局所への血流を減らすことによって、炎症を抑えます。
また、冷却療法を行うとき、疼痛信号を送っている局所の感覚をなくすかもしれません。
あなたは、ジェルパック、氷嚢（ひょうのう）、あるいは冷凍野菜のアイスバッグを使ってもかまいません。
温熱と寒冷のどちらも、一度におよそ15分か20分を超えて治療に使うべきではありません。
また、激しい痛みがある部位をマッサージしても、一時的に疼痛を緩和することができます。
温熱のように、マッサージは血流を増やし、筋肉の痙攣（けいれん）を和らげることもできます。
三つの異なるタイプのマッサージを検討できます。
自分の手でするセルフマッサージ、手動操作の機器を使うマッサージ、そして専門家によるマッサージです。
マッサージ療法士にかかる場合は、療法士に慎重であるように、そして痛覚感受性を頻繁にチェックするように頼んでください。