その4:保土ヶ谷高校シックスクール事故の顛末記 Ⅵ | 化学物質過敏症 runのブログ

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 安全データシートの11品目と合計すると28品目であり、エチルべンゼンに関しては、極めて高濃度である。

トルエン・キシレンによるシックスクール事故ではなく、28品目という多種類・大量の有機化合物が、保土ヶ谷高校の教室内を汚染し続けたと推定できる。

 安全データシート及び小型チャンバー法による検査結果から、汚染物質の全貌が見えてきたように感じる。

厚生労働省指針値は、あくまでも単品目の毒性に対する指針値であり、保土ヶ谷高校の事故例のように28種類の有機溶媒による汚染が引き起こす健康被害は、全く検証されていない。

 ウレタン防水剤の主剤の中には、極めて毒性の高いトルエンジイソシアネート(TDI)、フタル酸ジオクチル(DOP)が含まれる。

2005年6月24日、校内改修工事委員会にて、教育財務課担当者は、両物質の危険性を理解していると発言し、7月14日に気中濃度検査実施した。検査結果は、労働安全衛生法・厚生労働省の指針値を下回った。

2005年12月3日 第4回保護者説明会において、再度、両物質の小型チャンバー法による検査実施を要請したが、教育委員会は、拒否した。

 使用した有機溶剤と気中VOC濃度の間には、関連性が明確なものと、大きな相違があるものがある。

有機溶媒にはそれぞれ沸点が違っており、沸点が低ければ比較的早期に揮発するが、沸点が高い場合、揮発速度が遅くなり、継続的な室内汚染が続くのではないだろうか。


■住民(保土ヶ谷高校職員・生徒)から苦情が出た段階で、なぜ安全対策ができなかったのか

 神奈川県が委託契約をむすんでいる「社団法人神奈川県土地建物保全協会」(以下保全協会と記載)の総則を紹介する(2004年4月)。

▼「1.1.15 居住者等への周知徹底 1.工事に先立ち、監督者と協議のうえ、工事名称・工事内容・注意事項・工事期間・施工業者名・現場代理人名及び連絡先等を掲示等により周知する」:
事前に工事関係者の名刺を芸術担当者に渡しただけであった。

工事内容に関しては、異臭が発生しても、教育施設課担当者が2004年12月17日に工事ファイル1冊を提出するまで、「わからない」としか回答しなかった。

有機溶剤の危険性に関しては、まったく注意がなかった。

緊急時連絡先も上記のファイルではじめて判明した。


▼「2章 工事管理 1節2.1.2 8 塗料・シーリング材・接着材その他の化学製品の取り扱いにあたっては、当該製品の製造所が作成した製品安全データ(MSDS)を常備し、記載内容の周知・徹底を図り、作業者の健康・安全の確保及び環境保全に努める。」:
 工事中の苦情に対して、使用した有機溶媒の危険性について情報を提供しなかった。

なぜ、施工業者からMSDSの提出がなかったのか。

教育施設課は、保全協会にMSDSの提出を請求しなかった理由が理解できない。

安全データシートの常備が義務付けられているのに、苦情を訴えた住民(職員・生徒)に健康被害の可能性を示す危険情報の提供がなかった。

▼「2.1.3 災害、公害の防止 1工事施工に伴う災害の防止及び環境保全は、建築基準法・労働安全衛生法・略・大気汚染防止法・略・建築工事公衆災害防止対策要綱・略・に従い、災害の防止及び周辺区域の環境保全に努める」:
 工事中に居住者から苦情が出たにも関わらず、教室からの退避・及び健康被害の確認等の安全対策を全くしなかった。

▼「2.1.4 安全対策 9 工事の作業時間については、監督者と協議し、居住者の生活に大きな支障を及ぼす時間帯は極力避ける。」:
 授業中に防水工事を行い、多量の有害な揮発性有機溶剤を使用した。

▼「2.1.4 安全対策 10 居住者から、工事に起因する苦情の申し出があった場合には、遅滞なくその内容について書面をもって監督者に提出する。」:
 何度も工事中に苦情を申し入れたが、退避等の指示がなかった。危険物質の情報も保土ヶ谷高校の職員に伝えなかった。

施工業者の提出した安全衛生日報には、「苦情申し入れの記載」が一件もない。事務長と教室の臭気を確認しているのに、記載が全くない。

事故は何もなかったことになっており、異臭苦情に関して、書面を提出していないのではないか。

▼「7節 防水工事 ウレタン防水材の養生時間は、夏8時間 、冬18時間を標準とする。」:
 養生時間は、夏場8時間でウレタン防水幕が乾燥することを示している。3か月間「窓から臭気が入っている。」などの発言を続けてきたことは、常識では理解できない。

クラックから室内に浸入していることは、専門の業者であれば、すぐに判断できるはずである。それができなかった。

なぜか! また、県教育委員会はその点に関して、全く追求しなかった理由は? 

 多くの健康被害者を出し、教育現場を混乱させ、社会的な信頼を失墜させ、改修工事に、管理職の説明では7千万円以上の県費を支出した責任が県教育委員会にはあるのではないか。

健康被害者を救済することなく、ただ、事故責任を回避しようとしている。

(つづく)