④リスクコミュニケーションの推進
環境における化学物質に関するリスクコミュニケーションの推進対策としては、以下の3 項目が挙げられている。
[1]情報の整備-環境リスクなどの化学物質についてのわかりやすい情報の作成、提供
・化学物質ファクトシートの作成・普及
・PRTR データを読み解くための市民ガイドブックの作成・普及
・化学物質と環境に関する学習関連資料の作成・普及
・かんたん化学物質ガイド
[2]場の提供――市民、産業、行政等による環境リスクなどの化学物質に関する情報の共有及び相互理解の促進
・化学物質と環境円卓会議の開設・運営
[3]対話の推進-身近な化学物質に関する疑問に対して、対応する人材の育成やリスクコミュニケーションの手法の開発など
・化学物質アドバイザーの育成・派遣境円卓会議の開設・運営
・自治体のためのリスクコミュニケーションマニュアルの作成
・リスクコミュニケーションチェックシートの作成
・リスクコミュニケーション事例集の作成
・「米国のリスクコミュニケーション制度の運用実態について」調査報告書の作成
・化学物質のリスク管理に向けたリスクコミュニケーションに関するOECD ガイダンス文書(仮訳)の作成
⑤大気汚染の健康影響に係る調査
a) 環境保健サーベイランス調査
環境省では、昭和63 年公害健康被害補償法改正により、同法による第一種地域の新規の患者認定(大気汚染による疾病)が廃止されたことに伴い、地域人口集団の健康状態と大気汚染との関係を定期的・継続的に観察し、必要に応じて所要の措置を講ずるために、大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査を平成8年度から毎年度実施している。
同調査では、全国30 地域以上の一般環境大気測定局におけるNO2、NOx、SO2、SPM の1km メッシュ濃度に対する当該地域の3 歳児のぜん息や風邪ひきの有症率(アンケート回答結果による。対象者約8~10 万人、うち回答者約6~8 万人、平成16 年度は6 歳児も対象)との関係を解析、評価しており、平成8~16 年度の調査結果では、ぜん息有症率の変化と大気汚染濃度の変化との間に一定の傾向は認められていない(図-4.3.4 参照)。
出典:「平成16 年度 大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査結果について」(平成18 年12 月21 日、環境省環境保健部保健業務室)
図-4.3.4 ぜん息有症率(3 歳児調査)と大気汚染濃度の経年変化
b)「そら」プロジェクト
環境省では、また、自動車排出ガスによる健康影響を調べるため、関東、中京、関西の3 大都市圏で、平成17 年度から小学生約1 万2 千人、平成18 年度からは約10 万人の乳幼児(1 歳半)を対象として、アンケート調査や測定バッジによる汚染濃度調査、アレルギー調査などによる「そら」(SORA:Study On Respiratorydisease and Automobile exhaust-自動車排出ガスと呼吸器疾患との関連についての研究調査)プロジェクトを開始している。
⑥環境保健に関する調査研究
環境省における化学物質過敏症等に係る調査研究としては、「本態性多種化学物質過敏状態の調査研究」がある(「4.1(3)原因 2)発症メカニズム」参照)。