4)経済産業省
経済産業省では、化学物質管理政策として、化学物質管理に関する国際的な協調を考慮した法制度の整備、国際的な取組に積極的な参画、化学物質の効果的な管理のためのリスクに関する科学的な知見の整備、の3点を掲げて、化学物質の安全確保対策、オゾン層保護対策、地球温暖化対策などを進めている。このうち、化学物質過敏症等に関連すると考えられる化学物質の安全確保対策について概説する。
化学物質の安全確保対策としては以下の5 項目が挙げられている。
① 化学物質によるリスクを評価する手法等の開発
化学物質の構造から遺伝子を用いた有害性評価システム、大気中.河川中等における化学物質の濃度分布予測モデルなど、化学物質の有害性やリスクを評価する新たな手法を開発する化学物質総合評価管理プログラムを実施している。
② 化学物質の有害性に関する情報収集
化学物質の発がん性閾値について、これまでに報告された科学的データ等を収集、評価、整理する。
また、中期発がん試験を行い、最新の科学的知見に基づき閾値の有無、その予想される量等を明らかにする、としている。
③ 化学物質の排出量等を算出するためのマニュアルの整備
化学物質排出把握管理促進法におけるPRTR 制度では、実測以外の方法でも的確に排出量を算出できると認められる方法であれば、その方法を用いて排出量等を把握してよいことになっている。
そこで、事業者が化学物質の排出量等を算出する際に参考となる基本的な考え方や手法について取りまとめ、具体的な事例を基に分かりやすく解説したマニュアルを作成している。
④ 事業所周辺における化学物質によるシステムを評価するための開発
化学物質を取り扱う事業所周辺に対する化学物質のヒト健康への影響、環境(魚類・藻類等)への影響、プロセスの安全性(爆発・火災等のリスク)を評価するための手法を開発するとともに、化学物質の有害性等に係る情報を搭載したデータベースの開発及びソフトウエアの開発を行っている。
⑤ 有害大気汚染物質自主管理計画のフォローアップ
化学産業等の事業者団体は、通商産業省(当時)と環境庁(当時)が策定し
た「事業者による有害大気汚染物質の自主管理の促進のための指針」に沿ってベンゼン等の有害大気汚染物質の削減に向けた自主管理計画(第1 期:平成9年度~11 年度)・(第2 期:平成13~15 年度)を策定し、自主的な排出削減に取り組んでおり、国は、上記自主管理計画の取組状況のフォローアップを行うため、毎年度、経済産業省の産業構造審議会及び環境省の中央環境審議会において、排出削減実績や次年度の自主管理計画等についてチェック・アンド・レビューを行っている。