その6:第一部:化学物質過敏症に関する情報収集、解析調査報告書 | 化学物質過敏症 runのブログ

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表-4.1.2 代表的なMCS の定義
定義の表明者
定義
カレン(Cullen)
(1987)
①証明可能な環境由来の曝露、障害、または疾病に関連して発症する後天性の障害
②複数臓器に症状が発現する
③原因と思われる刺激に対して症状が再発及び軽減する。
④化学構造と中毒作用が多様な化学物質の曝露により誘発される
⑤(低レベルであるが)証明可能な化学物質曝露によって症状が生じる
⑥非常に低い、即ち人体に有害な反応を起こすことが知られている”平均”曝露量より数標準偏差値以上も低い曝露により症状が生じる
⑦広く使われているいずれの身体機能検査でも症状が説明できない
ベルリンワークショップ
(1996)における
提唱
(非公式見解)
①複数の反復する症状を示す後天性の疾患である
②一般の人では問題とならないよう多様な環境因子への曝露と関連する
③既知のいかなる医学的、精神科学的及び心理学的疾病では説明できない
アメリカ国立衛生研究所(NIH)主催のアトランタ会議(1999)における研究者間の合意事項(コンセンサス1999)
①化学物質に繰り返し曝露されると、症状が再現される
②健康障害が慢性的である
③過去に経験した曝露や、一般的には耐えられる曝露よりも低い曝露量に
よって症状が現れる
④原因物質の除去により、症状が改善または治癒する
⑤関連性のない多種類の化学物質に対して反応が生じる
⑥症状が多種類の器官にわたる
出典:「室内空気質と健康影響 解説シックハウス症候群」(平成16年2月、室内空気質健康影響研究会)により作成



我が国においても、MCS に相当する病態を表す用語として「化学物質過敏症」が用いられてきたが、厚生労働省が平成15 年より開催した「室内空気質健康影響研究会」の報告書「室内空気質健康影響研究会報告書:~シックハウス症候群に関する医学的知見の整理~」(平成16 年2 月)にあっては、『「化学物質過敏症」と診断された症例の中には、中毒やアレルギーといった既存の疾病概念で把握可能な患者が少なからず含まれており、MCS と化学物質過敏症は異なる概念であると考えられる。

そのため、既存の疾病概念で病態の把握が可能な患者に対して、「化学物質過敏症」という診断名を付与する積極的な理由を見いだすことは困難であり、また、化学物質の関与が明確ではないにも関わらず、臨床症状と検査所見の組み合わせのみから「化学物質過敏症」と診断される傾向があることも、本病態について科学的議論を行う際の混乱の一因となっていると考える』としている。

また、平成9 年に環境庁(現環境省)が設置した「本態性多種化学物質過敏状態に関する研究班」にあっては、『本態性多種化学物質過敏状態(いわゆる化学物質過敏症)については、現時点ではその病態生理と発症機序は未だ仮説の段階にあり確証に乏しい』1)と指摘している。

このように、MCS/化学物質過敏症についての定義は、国際的にも、国内にあっても、明確化されるには至っていないのが現状である。
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1)「「本態性多種化学物質過敏状態の調査研究」報告書について」、平成12 年2 月、環境省報道発表資料