その3:第一部:化学物質過敏症に関する情報収集、解析調査報告書 | 化学物質過敏症 runのブログ

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4.調査結果
4.1 化学物質過敏症等の病理学的な知見等
(1)基礎情報
1) 化学物質過敏症等が社会問題化するに至った経緯
近年、環境中に存在する微量な化学物質による環境汚染や人体汚染、室内空気中の化学物質が原因とされる健康への影響のおそれが大きな社会問題となっている。

① いわゆる化学物質過敏症に関する経緯
いわゆる化学物質過敏症については、「室内空気質と健康影響 解説シックハウス症候群」(平成16 年2 月、室内空気質健康影響研究会)によれば、1950 年代に当時シカゴ大学小児科教授であったランドルフ(Randolph)が、「環境中の化学物質への適応に失敗した結果、個体の新たな過敏の状態の形成」という病態を提言したことが端緒とされている。

その後1987 年に、化学物質に曝露される機会の多い労働者を診察していたカレン(Cullen)が「過去に大量の化学物質を一度に曝露された後、または長期間慢性的に化学物質に再接触した際にみられる不快な臨床症状」という概念のもと、これを多種化学物質過敏状態(Multiple Chemical Sensitivity:MCS)と呼ぶことを提唱し、この呼称が広く用いられてきた、としている。
我が国においては、北里研究所病院の石川哲博士が、1980 年代半ば、有機燐殺虫剤の慢性中毒患者の後遺症として、極めて微量の有機燐殺虫剤(ビル消毒に使われたもの)に反応する患者がいること、いわゆる不定愁訴を有することに気づいたのをきっかけとして、同博士は、アメリカの医師らといわゆる化学物質過敏症の科学的証明のために共同研究を続け、我が国にもその医学的な知見を紹介して、広く知られるようになった1)、とされている。

② シックハウス症候群に関する経緯
「室内空気質と健康影響 解説シックハウス症候群」(平成16 年2 月、室内空気質健康影響研究会)によれば、米国や欧州のいくつかの国では、1970 年代後半から1980 年にかけて、オフィスビルで働く労働者などの間で粘膜刺激症状や不定愁訴などの非特異的症状を自覚する人が増加し、「シックビル症候群」(Sick Building Syndrome:SBS)として社会問題化した。

このような健康問題が発生した原因については必ずしも解明されておらず、複合要因が関与している可能性が示唆されているが、エネルギーの利用効率化などの観点から、建築物の気密化や外気取り入れの規制が行われたために換気量が不足したことに伴い、室内空気の汚染が進んだことが主要な原因と考えられている、としている。
一方、我が国においては、建築物衛生関係法令上の規制もあり、シックビル症候群が社会問題化することはなかったが、1990 年代以降、住宅構造や生活様式の変化等に伴い、住宅等における室内空気質の悪化が懸念され、「シックビル症候群」を模した言葉である「シックハウス症候群」が注目されるようになった、としている。
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1)「化学物質の人体に対する医学的影響の解明とガイドライン値の検討」、石川哲、IAPOC1999 年度研究成果報告書

なお、いわゆる化学物質過敏症に係る歴史的な経緯を整理した結果を表-4.1.1 に示す。
同表の整理に際しては、法律の制定・改正・施行や、行政などの公的な機関の動向、学会等における発表などを対象とした。