◎治療と生活が大変な現状
医学的診断が非常に困難とされる中で、いくつかの医療機関では可能になっている。
北里大学研究所病院の眼科医らによる診断が有名であるが、極めて微量の化学物質にわざとばく露させて、その反応で調べるという方法などがある。
いずれにせよ、設備や専門医が必要になる。
しかし、たいていの患者さんが、ありとあらゆる病院にかかって、それでも原因が不明である。
だからそういう患者さんで、化学物質にばく露したことのある人が化学物質過敏症と考えられる。
大変おおざっぱに聞こえるかもしれないが、実際にそうとでも考えるしかないというのが実情である。
問題は、これといった治療法がないこと。
まず、化学物質の摂取量を減らすために無農薬野菜などを食べたり、添加物のない化粧品を使うなどの生活改善。
さらに空気のいい所で、ビタミンCをとったり、風呂に入って汗をかいて、新陳代謝をよくするなどの方法が勧められる。
しかしいずれも経済的にはかなりしんどい。前述したとおり、精神的にしんどくなる人も多いので、フォローが重要である。
◎労災認定について
明らかにそれなりの濃度の化学物質にばく露し、急性症状はなくなったのに、さまざまな微量の化学物質などに敏感に反応して具合が悪くなるケースと、それほど高濃度ではない、あるいは確認できない程度の化学物質にばく露した結果、やはりさまざまな微量の化学物質に反応して具合が悪いケースがある。
いずれにせよ、労働基準監督署は、高濃度ばく露による急性症状と、それなりの濃度の長期間ばく露による慢性症状という枠組みでしか考えないので、なかなか難しい。
職場環境の様子は、なかなか外部からはわからない。
本人でも、目が痛い、においがきついとか具合が悪くても、風邪かなと考えてしまうものだ。
厚生労働省などが示した、ホルムアルデヒドなどの指針値がある。
もちろんこれよりも低ければ、安全だとか、高いとすぐに誰でも病気になるわけではない。
ただ、行政の対応としては、これ以上では人を入れないようにするようになっているし、労災認定もこれを一つの目安にしていると思われる。
これまでに把握している範囲では、大阪で二例、愛媛で一例が業務上認定になっている。
大阪の二例は、保育園のプレハブ園舎と新築のビルが原因である。
いずれも指針値を超えているようだ。愛媛の一例は工場だが、被災者は設計担当であり、常時ばく露していたわけでもないし、高濃度ばく露も考えにくい事例だった。
きちんとした医学的証拠と監督署長の英断があったのではと考えられる。東京や神奈川では類似例はいずれも業務外になっている。
runより:ちなみに神奈川労災職業病センターは花王提訴のOさんの記事も掲載しています。
今日掲載した画像記事ですが神奈川の発刊した物だったので援護していると思います。