3. 特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の推進に関する法律
[化学物質管理促進法(PRTR 法、化管法)]
公布 平成12 年3 月
a.目的
「化学物質管理促進法」は、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的としているが、その方法として大気汚染防止法、水質汚濁防止法等に見られるような単なる規制法でなく、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進することによって目的を実現しようとする法律である(法第1条)。
b.適用範囲
法律は、対象化学物質、対象事業者、対象業種及び製品の要件について適用すべき範囲を次のように規定している。
なお、適用範囲以外で環境に排出されていると見込まれる第一種指定化学物質の量については、国が省令等で定める事項ごとに算出、集計し、併せて公表することになっている(法第9条)。
国が算出する例として、車などの移動発生源、農林水産業及び小規模事業者の排出が考えられる。
以下、国が算出すべきこれらの発生源を非点源等という。
(1) 対象化学物質
対象とすべき化学物質(指定化学物質という)は、次に該当する物質を選定の基準としている(法第2条)。
1. ひとの健康又は動植物の生息・生育に支障を及ぼすおそれのある物質
2. 1.に該当する物質が自然的作用による化学的変化により容易に生成する物質
3. オゾン層を破壊することにより、ひとの健康を損なうおそれのある物質
これらのうち、現に広範囲にわたり環境に継続して存在するものを第一種指定化学物質、今後広範囲にわたり環境に継続して存在するものと見込まれる物質を第二種指定化学物質という。
第一種指定化学物質は、PRTR 及びMSDS 等の提供に関する指定化学物質であり、第二種指定化学物質は、MSDS 等の提供に関する指定化学物質である。
指定化学物質の選定は、環境庁長官、厚生大臣及び通商産業大臣がそれぞれの審議会である中央環境審議会、生活環境審議会及び化学品審議会の意見を聞き、政令で定められた。
具体的な化学物質の名称は、法施行令第1条別表第1に定められている。
c.概要
・事業者の義務と責務
・第一種指定化学物質又は当該化学物質を含有する製品のうち、政令で定める製品の要件に該当するものを製造、使用その他業として取り扱う事業者は、当該化学物質の環境への排出量・移動量を毎年度、前年度の結果について把握し、都道府県を経由して事業所管大臣に届け出ることが義務化された(法第5条)。
事業所管大臣は、届出に係る事項を環境大臣及び経済産業大臣に通知し、そこで個別データは電子ファイルに記録され、地域別業種別等に集計、公表される。
個別データは、該当する事業所管大臣及び都道府県知事にも通知され、そこでも業種又は地域にあった集計、公表ができることになっている(法第8条)。
ここで、排出量とは、製造、使用その他の取り扱いの過程を通して計算される物質収支、実際の測定その他の方法によって算出された、大気、水域及び土壌環境中に排出される第一種指定化学物質の量を言う。
また、移動量とは、廃棄物の処理を当該事業所の外において行うことに伴い当該事業所の外に移動する第一種指定化学物質の量を言う。
・指定化学物質について事業者の自主的な管理の改善を促進することにより、環境保全上の支障を未然に防止するという立場から、義務規定ではないが、事業者の責務として指定化学物質の管理の実施及びその管理の状況に関する国民の理解を深める努力を事業者に求めている(法第4条)。
なお、指定化学物質の管理の方法として、事業者は、国が策定した化学物質管理指針に留意して、管理を行うこととしている(法第3条、第4条)。