・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/
・http://kokumin-kaigi.org/wp-content/uploads/2013/08/Newsletter79.pdf
身の回りの多くの生活用品に使われている有機顔料にPCB
2012年2月、化粧品原材料、着色剤など身の回りの多くの製品に使われる有機顔料にポリ塩化ビフェニル(PCB)が含まれていることが判明し、残留
性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で流通させるべきでないとされている濃度0.005%(50ppm)を超えている有機顔料について、出荷停止、回収、製造、輸入停止を行うように経済産業省が行政指導を行いました。
経済産業省によれば今回、出荷の停止及び回収、製造と輸入を禁止した有機顔料の主な用途として、化粧品の原材料、着色剤、塗料、インキなどの記載があり、身の回りの製品にPCBが含有されているおそれがあるということです。
PCBの分析や処理に長年かかわってこられている大阪大学大学院工学研究科の中野武特任教授に、なぜ有機顔料にPCBが含まれたのかをお伺いしました。
Q まず、中野先生とPCBのかかわりを教えて
ください。
A 私は、兵庫県立公害研究所(現在の兵庫県環境研究センター)でPCBのことを36年間研究しました。
現在は、大阪大学で研究を続けています。
PCBとは、化学的に合成された有機塩素化合物の一つで、ベンゼン環が二つ結合したビフェニルと呼ばれる物質に含まれる10個の水素が塩素に置き換わった化学物質です。
置き換わった塩素の数や位置により209種類の異性体がありますが、それらを総称してPCBと呼ばれます。
変圧器やコンデンサ・安定器などの電気機器用絶縁油や感圧紙、塗料、印刷インキなどに、幅広く利用されていました。
日本では、1968年に発生したカネミ油症事件を契機として、1972年にPCBの使用・製造・輸入が原則として禁止されました。その後、1987年~1989年にPCBの生産者であった鐘淵化学工業の兵庫県高砂市にある自社工場内に全国から回収し保管していた約5500トンのPCBについて、環境庁・厚生省・通産省・兵庫県・高砂市の高温熱分解による方法で無害化処理を行った際にも、排ガスや排水、周辺環境についてモニタリングを行いました。
このときは、安全に短期間で大量のPCBの無害化に成功したと評価しています。
残念ながら、現在も無害化処理を待つ大量のPCBが保管されています。2001年に制定されたPCB廃棄物適正処理推進特別措置法では無害化処理期限を2016年7月としていましたが、昨年、期限を2027年3月へと大幅に延長することが決まりました。
低濃度のPCBを含む機器も膨大な量があり、まだPCB問題は終わっていないのです。