日本の農薬規制とその問題点 | 化学物質過敏症 runのブログ

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NEWS LETTER Vol.78

・日本の農薬規制とその問題点
反農薬東京グループ 辻 万千子
 日本の農薬規制はEUに比べて遅れている。

根本的な原因は、日本では予防原則が無視されていることにあると思う。農薬推進派は、農薬は毒であることを何とか隠そうとし、「適正に使用すれば安全」と言っている。

たとえば、「普通物」という言い方がある。

農薬業界や行政は「毒物劇物取締法」で、毒物、劇物に指定されていない農薬を「普通物」と呼ぶ。

反農薬東京グループが昨年、「普通物」という呼称はやめるべきと要望したところ、厚労省、農水省ともに「普通物という呼称は安全だという誤解を与える」から、以後、気をつけると言いながら、未だに平気で使用している。

「普通物」と言われる農薬で、毎年数百人が死亡しているにもかかわらずである。

★農薬使用の現状
 農薬取締法上、農薬は登録されたものしか使用できないことになっている。

現在、日本の登録農薬は有効成分が約500種、製剤で約4500種もある。

出荷量は約23万トン、有効成分は約6万トン(推定)で、単一作物で最大使用場所は水田である。
 2008年のOECDのデータによると、耕地面積当たりの農薬使用量は、日本は世界第二位だ。

第一位は韓国となっている。ちなみに、2010年の日本の耕地面積は、約460万ヘクタール、そのうち水田が約250万ヘクタールである。
 図1は、1958年からの農薬生産量の推移である。70年代が量としては最大で、少しずつ減少してきている。水田面積が減少したのも理由の一つだ。
 農薬の種類別の出荷数量を見ると、減ってきたとはいえ、未だに有機リン系がトップだ。次がカーバメート系だが、近年になるとネオニコチノイド系が急増している。
 図2で、有機リン、カーバメート、ネオニコチノイド系農薬の3種の出荷量の推移を示す。
図1 農薬生産量の推移
図2 有機リン、カーバメート、ネオニコチノイドの出荷量推移(図省略)

★農薬規制の仕組み
 農薬と全く同じ成分が家庭用殺虫剤、防疫用殺虫剤、シロアリ防除剤、動物用医薬品などさまざまな用途で使用されている。

しかし、これらは別々の法律で規制され、中には全く規制がないものもある。
この用途別規制が一番大きな問題だ。
 現在の農薬と、その類似物質の主な法規制をあげる。
 農薬取締法、薬事法、食品衛生法、水道法、毒物及び劇物取締法、PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
 これだけの法律がありながら、健康被害、環境汚染を防ぐことができていない。
 無規制の農薬類似品は以下の物がある。
 シロアリ防除剤/衣料用防虫剤/不快害虫用殺虫剤/非植栽用除草剤/製品に添加されているもの(防虫畳、接着剤、抗菌加工製品、殺虫剤入り衣服・ネット、忌避剤など)

★農薬取締法の問題点
 農薬取締法には、以下のような問題点がある。
・農耕地、森林、芝地、その他植物栽培場所以外での使用は農薬取締法の対象外であること。
・人の健康影響評価は作物への残留による影響が主で、大気、水、土壌経由による人体の影響は配慮されていないこと。
・自然環境への影響は魚介類、蚕、ミツバチなど一部の急性毒性評価しか行われていないこと。生態系への影響評価が行われておらず、野生生物への影響はほとんど考慮されていないこと。
・農薬の登録失効の原因が公表されず、毒性が明らかにならないこと。
・輸出用農薬は農薬取締法の適用外であること。
・化学物質過敏症患者が増えているにもかかわらず、それに対するが対策がないこと。

★農薬による健康被害
 いくつかの統計はあるが、すべて重度の急性中毒のみであり、それも全体を統一的に示したものはない。

科学警察研究所は薬物中毒の統計を毎年発表している。

農薬によって死亡した人は2000年が709人、2008年が450人である。

自殺がほとんどだが、この統計には東京都は入っていない。

厚労省の人口動態統計では2010年の死亡者は495人になっている。

死に至る前の中毒や化学物質過敏症に関しての統計はない。

★農薬の空中散布
 有人・無人ヘリコプターによる農薬の空中散布が未だに実施されている。有人・無人ヘリ共に農薬の濃度は地上散布の100倍程度濃くなっている。大量に積み込めないため、濃度を濃くせざるを得ないわけだ。

有人ヘリコプターによる空中散布は1960年代から水田を中心に始められ、80年代に最高174万ヘクタールを記録した後、反対運動の高まりなどで減少に転じ、2010年には7万ヘクタールになっている。
 その代わりとして登場したのが産業用無人ヘリコプターによる空中散布だ。小回りがきくため、ふいに庭先まできて散布するという事例もあった。

事故も多く、11年には物損事故だけで43件あった。
 無人ヘリ散布に関する法的規制はない。

★住宅地周辺での農薬散布の規制
 無人ヘリ散布はもちろんのこと、学校、病院、公園、公共施設、街路樹、個人の庭などに農薬散布され、苦しんでいる人が大勢いる。

私たちは2003年の農薬取締法改定時に、生活環境での農薬規制を申し入れ、ようやく「住宅地等における農薬使用について」という通知が農林水産省から出された(その後、2007年に通知は改定され、農水省と環境省の2局長の発出となった)。

しかし、この通知には罰則がない。
現在、この通知の強化に取り組んでいる。

<反農薬東京グループからのお願い>
 反農薬東京グループは2012年4月から、住宅地周辺での農薬使用を減らすために、通知「住宅地等における農薬使用について」の改定を求めて農水省・環境省と交渉を3回行いました。

両省は、改定案のパブリックコメントを12月中に出すとしています(12月18日時点で未掲載)。
 農水省のホームページをチェックして、改定案に対する意見を述べていただければ幸いです。