・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/
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NEWS LETTER Vol.78
・REACHと農薬
フランス環境NGO連合
元欧州環境局 クリスチャン・シェブル
国際シンポジウムの最後のEUからの講演者は、フランスのクリスチャン・シェブル氏だった。
氏はフランス環境NGO連合に所属しているが、以前は元欧州環境局(EEB)に所属しており、新しい化学物質規制の法律であるREACHについて、その執行上の問題点を指摘した人物でもある。
REACH規制とは
EEBは1974年以降、ブルッセル(ベルギー)に本拠地を置き、31か国が参加するEU最大の環境NGOである。
この団体は、ヨーロッパ市民の環境に対する意見を代表し、環境正義、持続可能な発展、および参加民主主義を支持している。
そして、REACHとは化学物質の安全な使用、取り扱い、用途に関する新しい欧州連合の法律で、厳しい登録(Registration)、評価(Evaluation)、認可(Authorization)および、制限(Restriction)などの制度を化学物質(Chemicals)に新たに適用するものである。
この法律は従来の化学物質に関係する膨大なEU法を置きかえ、他の環境と安全に関する法制度を補完するもので、2007年6月より実施されている。この法律制定の背景には、化学物質の使用によるヒトの健康や環境への影響に関する情報が不足していること、有害化学物質の代替に関する情報が不十分であることなどいくつかの要因があった。
REACH規制への批判
しかし、REACH採択から5年が経過し、EEBとクライアント・アースは、欧州化学物質庁(ECHA)がREACHの執行を怠ったために、化学物質の安全性が損なわれたと厳しく批判する報告書を発表した。
この報告書作成で活躍したのがシェブル氏でもある。
報告書によれば、化学産業がREACHを機能させるために必要なデータの供給を甚だしく怠った。
また、欧州化学物質庁は、産業界のそのような状況を放置しているだけでなく、一般大衆にそのことを隠してきた。
すなわち、2011年末から2012年3月までのあいだにNGOによって実施されたREACHの監査は、登録された物質の大部分に基本的な欠陥があることを見つけたというもので、REACHのふたつの大原則、ノーデータ・ノーマーケット原則と、物質ごとの登録を義務づけるという原則が、日常的に無視されていることがわかった。
REACH規制と農薬規制
REACH規制では、農薬規制で承認されている有効成分は「登録された物質」とみなされる。
しかし、農薬として登録されている有効成分であっても、たとえば殺虫剤など農業用以外の用途で使用される場合には、登録のために必要な書類と同等の情報を欧州化学物質庁に提出しなければならないとされている。
EUの2009年の農薬規制法とREACHに基づく物質評価の一番大きな違いは、農薬規制では使用量の多さに関わりなく、使用前に承認を得ることが求められるが、REACHでは一定程度の使用量があるものにしか登録する必要がない、ということである。
内分泌かく乱物質の基準を開発することや、有害な化学物質が害を及ぼす前に代替できる仕組みをいかに作っていくかということは、農薬規制法とREACHに共通する課題である。
(報告:水野 玲子)
runより:こういう規制を日本も作ってほしいですね。