「IEI支持」特発性環境不耐症の臨床所見:2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・対象と方法
1.対象
2005 年6 月から2008 年10 月までに当科を受診した患者270 名のうち,IEI とSHS と考えられたものIEI 患者42 名(以下IEI 群,男8 名19.0%,女34 名81.0%,43.0±12.6 歳,24~67 歳)とSHS 患者88 名(以下SHS群,男17 名19.3%,

女71 名80.7%,38.9±13.1 歳,22~79 歳)とを対象に行った.なお,診断は,熟練した当科医師が行った.いずれも初診患者であり,他のIEI やSHS の診療を行っている医療機関を受診していなかった.
本報告におけるIEI の診断は,概ねCullen4)あるいは1999 年の米国での合意事項18)に概ね従い,

①複数臓器に関連する自覚症状,

②微量の化学物質曝露で症状を呈する,

③曝露から離れると症状が消失する,

④関連がない多種類の物質で症状を呈する,

⑤慢性に経過することを基準にした.
また,SHS の診断基準は,以下の通りである.

①発症のきっかけが,転居,建物の新築・増改築・改修,新しい家具の使用などであること,

②在室者の多数・複数が症状を訴えていること,

③その場所を離れると症状が改善すること,

④眼,鼻等の粘膜刺激症状が主であること,
⑤種々の検査によってアレルギー疾患及び甲状腺疾患などの他の疾患が否定的であること,の全項目を満たし,
⑥環境測定により,室内環境汚染が確認され,原因物質が測定されていることが望ましい1).

2.方法
カルテに記載された自覚症状,
既往歴,心理検査,血液一般・血液生化学検査,免疫系検査,生理検査のデータを用いた.

主な自覚症状は以下のように分類した.気道症状,中枢神経等の症状,精神症状,自律神経症状,眼症状,泌尿生殖器症状,末梢神経と四肢の症状,消化器症状,皮膚症状,その他.

既往歴は以下のように分類した.アトピー性皮膚,アレルギー疾患,自己免疫疾患,精神疾患,および前記以外の長期の通院又は入院が必要な疾患として,循環器疾患,消化器疾患,内分泌代謝疾患,感染症,泌尿生殖器疾患,血液・腎臓疾患,眼耳鼻の疾患,皮膚・神経疾患,整形外科疾患・外傷,悪性新生物,呼吸器疾患(喘息を除く),その他.


臨床検査としては,血液一般・血液像,生化学検査(AST,ALT,ChE,LDH,総コレステロール,Na,Cl,K,BUN,クレアチニン,Ca,CPK,アルブミン,総蛋白,血糖値,CRP,TSH,遊離T3,遊離T4),免疫学的検査(総IgE,環境アレルゲン14 項目,食物アレルゲン12 項目の特異的IgE)であった.

生理検査として,肺機能(予測肺活量,1 秒量,1 秒率:スーパースパイロD-21 FXII,チェスト(株),東京),瞳孔反応(イリスコーダーCD364,浜松ホトニクス,浜松市),視標追跡におけるサッケード出現率(メディテスターVOG CD8001,松下電工(現パナソニック),門真市),および血圧,体温,経皮的血液酸素飽和度をおこない,心理検査には不安状態と不安になりやすい性格傾向を測定するState-Trait Anxiety Inventory の日本語版(STAI),

および気分や感情の変化を測る検査であるProfile of Mood Status の日本語版(日本版POMS,金子書房,東京)をおこなった.
統計検定には統計ソフトSPSS Ver.15(Inc.)を使用し,主な自覚症状や既往歴の有無の割合のIEI とSHSの群間の有意差はχ2検定によった.
倫理委員会:関西労災病院院内倫理委員会の審査を経て承認された.